2011 Fiscal Year Annual Research Report
一過性脳虚血に対する舌下神経前位核ニューロンの脆弱性
Project/Area Number |
22791568
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
紫野 正人 群馬大学, 医学部, 助教 (20550015)
|
Keywords | 舌下神経前位核 / 虚血 / 内族前庭神経核 / パッチクランプ / 自発発火 / 一過性過分極 |
Research Abstract |
椎骨脳底動脈循環不全症における眼振は神経積分器である舌下神経前位核と内族前庭神経核の虚血による一過性の機能不全と考えられる。本研究ではこれら神経核ニューロンの虚血に対する反応を調べた。昨年度の研究から、これら神経核ニューロンは定常状態では自発発火するが、虚血負荷により、過分極して自発発火を停止することがわかった。さらに、この変化はニューロンへの入力をすべて遮断した状態でも生じうることから、ニューロン自身の内因性変化に起因すると考えた。そこで、本年度はこの内因性変化の原因となるイオンコンダクタンスの解明を行った。虚血によりニューロンに生じる現象はATPの枯渇であり、膜電位を過分極させるイオン電流の候補として外向きカリウム電流を考えた。中脳黒質線状体のドーパミン産生ニューロンでは虚血に反応してATP感受性カリウムイオンチャネルを介した外向きカリウム電流により膜電位が過分極することで、異常発火を防ぐ自己防衛機構が報告されている。これと同様のメカニズムを想定し、ATP感受性カリウムイオンチャネルの阻害剤(glibenclamide,tolbutamide)存在下で、膜電位変化をパッチクランプ・電流固定法で観察した。その結果、虚血負荷を与えても、ニューロンは過分極することなく自発発火を継続した。さらに、ATP感受性カリウムイオンチャネル由来の外向きカリウム電流を直接証明するために、電圧固定法にて実験を行った。その結果、ニューロンを過分極させる約100pAの一過性外向きカリウム電流が観察され、この電流は阻害剤存在下では見られなかった。以上より、舌下神経前位核と内族前庭神経核ニューロンは虚血負荷によりATPが欠乏すると、ATP感受性カリウムイオンチャネルを介して、細胞外へカリウムイオンを流出させて膜電位を過分極にすることで、自発発火を停止する機構をもつことが解明された。
|