2011 Fiscal Year Annual Research Report
頭頚部扁平上皮癌に対する抗腫瘍免疫応答を賦活する新規治療薬の開発
Project/Area Number |
22791569
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
櫻井 大樹 千葉大学, 大学院・医学研究院, 講師 (10375636)
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Keywords | 遺伝子 / 医療・福祉 / 核酸 / 癌 / 免疫学 |
Research Abstract |
これまで頭頚部癌の治療は、手術・放射線・化学療法の3者を組み合わせて行われてきたが、進行例では再発・転移も多く予後は不良である。さらなる治療成績の向上には新たな治療の開発が急務である。近年、癌は免疫を抑制的に制御することで癌細胞が免疫系から逃れ増殖しやすい環境を作り出していることが明らかになってきている。癌患者の末梢血には免疫を抑制する白血球が増加することが報告され、骨髄球系の細胞表面分子を有することから骨髄由来抑制細胞(MDSC:myeloid-derived suppressor cells)と呼ばれている。しかしその詳細は不明である。 頭頸部腫瘍未治療患者および健常者の末梢血を採取し、単核球分画(PBMC)を分離・回収しMDSC(HLA-DR(-)/Lin(-)/CD14(-)/CD15(+))の解析を行った。頭頸部扁平上皮癌患者は、健常者および良性の多型腺腫と比較しMDSCの有意な増加を認めた。またPBMC中のT細胞に対する抗CD3抗体および抗CD28抗体による刺激において、CD15(+)MDSCの除去により、活性化による分裂が促進されることが判明した。また、頭頸部扁平上皮癌患者において、末梢血リンパ球の比率の低下はしばしば観察されるが、MDSCの比率と末梢血リンパ球の比率には有意な逆相関が認められ、さらにリンパ球の中でも特にT細胞の比率と、MDSCの比率に有意な逆相関が認められた。このことから頭頸部扁平上皮癌においてMDSCは増加し、T細胞の活性化を抑え、抗腫瘍免疫を抑制することが示唆された。さらに手術治療を行った症例において、MDSCの増加群と非増加群において、腫瘍組織中micro-RNAの網羅的な発現比較解析により、有意差のあるmicro-RNAを確認した。今後MDSCの増加と腫瘍免疫の抑制に関与する機構を解明するうえで有用な情報になると考えられる。
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