2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22791579
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
遠藤 一平 金沢大学, 附属病院, 助教 (30547154)
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Keywords | 上咽頭癌 / LMP1 / SATB1 / EBウイルス |
Research Abstract |
上咽頭癌の悪性化とEBウイルスの潜在的膜蛋白であるLMP1との関連について検討した。これまでLMP1は多くの転移関連因子を誘導することで上咽頭癌の悪性化に関与していることを当教室のこれまでの研究でしめしてきた。しかし依然としてLMP1の詳細な機能は不明な部分が多い。 本研究ではLMP1のさらなる機能解明を目的とした。細胞核内において多くの遺伝子の発現調節を行っているSATB1蛋白に着目し、LMP1がSATB1の発現増強を起こすことを確認した。誘導されたSATB1蛋白はMTTアッセイで細胞増殖を亢進した。また血清の非存在下のもとアポトーシスを誘導した培養細胞において、LMP1発現細胞は親細胞に比べ有意にアポトーシスに抵抗性を示した。しかしLMP1発現細胞でSATB1をshRNAにより選択的に抑制すると、このアポトーシス抵抗性が現弱された。さらにこうした現象にはアポトーシス関連蛋白であるSurvivinが関与していることを突き止めた。すなわちLMP1→SATB1→Survivin→アポトーシス抑制といったシグナル伝達であることが分かった。また上咽頭癌の生検標本においてLMP1とSATB1の免疫組織学的検討において両者の発現が優位に相関していることがわかった。 今回の研究でEBウイルス蛋白の一つであるLMP1が遺伝子発現調節蛋白であるSATB1を誘導することで細胞増殖能を亢進し、さらにアポトーシス抑制を引き起こすことを見出した。これは上咽頭癌においてLMP1の悪性化関与機構の一つの可能性を示唆した。今後はさらに先に示したシグナル伝達機構の詳細な解明を行う予定である。LMP1を介したシグナル伝達機構の全容を解明し、鍵となる分子を同定できれば、将来的には分子標的治療薬の開発へとつながるもの思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、研究の遅れがあったが、現在論文投稿中
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Strategy for Future Research Activity |
EBウイルスの上咽頭癌での悪性化メカニズムの解明さらに、治療への応用についてさらなる検討をする予定である。
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