2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22791607
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
北村 嘉章 徳島大学, 病院, 講師 (60380028)
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Keywords | 花粉症 / 初期療法 / 遺伝子発現 / ヒスタミンH1受容体 |
Research Abstract |
ヒスタミンH1受容体拮抗薬を用いた花粉症の初期療法の分子メカニズムを明らかにするため、ヒスタミンH1受容体拮抗薬の初期療法は、鼻粘膜におけるヒスタミンH1受容体遺伝子発現のup-regulationを抑制し、発症後の投与よりも有効であるという作業仮説をたてた。本研究では、我々が開発したヒトの鼻粘膜のヒスタミンH1受容体mRNAを低侵襲で繰り返し測定できるシステムを用いた。スギ花粉症患者の鼻粘膜をスギ花粉飛散時期に経時的にスパーテルで擦過採取し、ヒスタミンH1受容体の遺伝子発現の定量的検討をリアルタイムPCRにて測定した。同時にアレルギー性鼻炎症状を重症度分類を用いスコア化した。初期療法群は無治療群と比べ、くしゃみ、水様性鼻汁などのアレルギー性鼻炎症状が抑制されていた。また、初期療法群は無治療群と比べ、鼻粘膜のヒスタミンH1受容体遺伝子発現が抑制されていた。さらに、アレルギー性鼻炎症状とヒスタミンH1受容体遺伝子発現レベルとの相関を解析し、正の相関を認めた。すなわち、鼻粘膜のヒスタミンH1受容体mRNA発現が高いとアレルギー性鼻炎症状が悪化し、ヒスタミンH1受容体拮抗薬を用いた初期療法により鼻粘膜のヒスタミンH1受容体mRNA発現が低下すると、アレルギー性鼻炎症状が軽快することを意味していた。このことから、ヒスタミンH1受容体遺伝子はアレルギー疾患感受性遺伝子の一つであると考えられた。以上より、ヒスタミンH1受容体拮抗薬を用いた初期療法は、ヒスタミンH1受容体のブロッカーとしてヒスタミンシグナル伝達を抑制するだけでなく、アレルギー疾患感受性遺伝子であるヒスタミンH1受容体の遺伝子発現の亢進を抑制することにより、より強くその効果を発現している分子メカニズムを明らかにすることができた。今後、アレルギー疾患感受性遺伝子をターゲットとした新しい抗アレルギー薬の開発がスギ花粉症の新たな治療戦略へ発展することが期待される。
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