2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規疾患モデル樹立に向けた小型霊長類コモンマーモセットの聴器・側頭骨に関する検討
Project/Area Number |
22791628
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤岡 正人 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70398626)
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Keywords | 耳科学 / トランスレーショナルリサーチ / 実験動物学 / 比較解剖学 / 画像診断 |
Research Abstract |
耳科学・聴覚医学における次世代トランスレーショナルリサーチに向けて小型霊長類コモンマーモセットの側頭骨および聴覚中枢の解剖・画像評価と耳科手術のための局所解剖を主題に研究し、以下の成果を得た。 1.側頭骨局所解剖の理解と手術解剖の検討 8体での解析から、(1)耳後切開で乳突蜂巣部位に存在する空洞(bulla)を開けると内側に外側半規管隆起が安全かつ容易に同定される、(2)半規管隆起の尾側基部を始点に、半規管を含む平面と55°の角をなす平面上で頭側にアプローチすると、安全なposteriortympanotomyが可能であることを見出した。 2.側頭骨の画像解析において通常のCTが必要かつ十分であった。μCTは耳小骨などに特化した微細領域には有用だが、側頭骨の検討には画像ファイルが大きく解析に時間を要すため実用的ではなかった。 3.内耳~内耳道の神経走行の検討には、7T-MRIにcryogenic probeを要した。これにより特殊な染色などを要さずに、蝸牛神経(頂回転;基底回転由来)、上・下前庭神経、顔面神経を同定可能だった。 4.聴覚中枢の解析には7T-MRI単独で十分だった。複数のROIを用いたアルゴリズムを開発し、蝸牛~蝸牛神経~蝸牛神経核~中脳各核(オリーブ核、外側毛帯、中脳下丘)の神経走行の描出に成功した。他方聴放線の描出には技術的にクリアすべき課題が残っており、来年度以降の検討に譲ることとなった。 マーモセットはその発達した言語コミュニケーションで判るよう、言語聴覚など高次脳機能の一部としての聴覚系を検討しうる霊長類モデル動物である。今回得られた局所解剖の知見と聴覚中枢ネットワークの新規描出法は、今後末梢~高次中枢を横断的に検討する際欠かせないツールとなる。急性内耳性感音難聴における中枢まで含めた病態生理、とくに末梢聴器障害による急性感音難聴患者における聴覚異常感(耳鳴、耳閉感、聴覚過敏、音質や音程の変化)や、聴覚再獲得時の聴覚中枢のリハビリテーションにフォーカスして来年度以降研究を進めたい。
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