2010 Fiscal Year Annual Research Report
立体構造予測によるOTOF遺伝子変異を原因とする先天性難聴の治療を目指す研究
Project/Area Number |
22791641
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
Principal Investigator |
難波 一徳 独立行政法人国立病院機構 東京医療センター(臨床研究センター), 聴覚平衡覚研究部, 研究員 (60425684)
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Keywords | Auditory Neuropathy / 遺伝子変異 / OTOF / 立体構造 / 難聴 / 蛋白質 |
Research Abstract |
OtoferlinはOTOF遺伝子の遺伝子産物でAuditory Neuropathy(AN)の原因遺伝子であり、内耳有毛細胞において、SNARE複合体を形成し、カルシウム依存的にシナプス小胞分泌および小胞のリサイクルに重要な働きがあることが知られている。Otoferlinを介するSNARE複合体分子メカニズムとその構造情報については当初未知であった。そこで、本研究室で見つかった5種類の新規OTOF遺伝子変異のそれぞれの病害メカニズムを調べるために、Otoferlinを構成する6つのカルシウム結合ドメイン(C2A-F)の立体構造を分子モデリングにより作成した。また、バイオインフォマテックス的調査より、このOtoferlinがリン酸化に関与する可能性が挙げられたため、培養細胞を用いてOtoferlinを含むSNARE蛋白質SNAP25およびSyntaxinlaの発現ベクターを作成し、キナーゼの活性化また阻害をしたときの結合様式を調べることを目的とし実験に着手した。 分子モデリングは6つのC2ドメインにおける最適の鋳型蛋白質を選出することにより作成した。特にC2Aドメインの構造は精度の高い予測構造をモデリングすることに成功した。当研究室で見つかった新規病的変異DAsp1842Asnは、C2Aドメインの上にあり、Asp1842はカルシウムイオンと直接相互作用しており、これがAsnに変異することにより静電的斥力がはたらき結合を阻害したものと考えられた。また、当研究室のAN患者より同定したOTOF遺伝子の変異が入ったOtoferlin発現ベクターをそれぞれ5種類作成した。 本研究では、OTOF周囲のリン酸化機構の同定には至っていないが、OTOF遺伝子の変異がどのような構造メカニズムの障害によりANを発症するか説明するための有効な分子モデリング手法および、Otoferlinの分子メカニズムを解析続行するための基盤を確立できたことであり、今後の変異情報の蓄積が、更なる詳細なOtoferlin分子機能の解明に繋がることが予想される。本成果は、基礎的なANの発症モデルを確立するだけでなく、AN治療を目的とする治療薬開発に繋がることが期待され、本研究データはその基盤構築に重要な意義があると考えられる。
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