2010 Fiscal Year Annual Research Report
他覚的な自閉傾向検査を難聴児に臨床応用できるか:低年齢化が進む人口内耳の現場から
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22791642
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Research Institution | Foundation for Biomedical Research and Innovation |
Principal Investigator |
山崎 博司 (財)先端医療振興財団, 診療部, 研究員 (80536243)
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Keywords | 人工内耳 / 自閉症 / autistic spectrum disorder (ASD) |
Research Abstract |
本研究では、小児科領域で最近報告された自閉症スペクトラム障害(ASD)重症度の他覚的検査(顔認識注視点走査、光点画像認識)を難聴児に応用し、ASDの重症度と人工内耳装用効果の関連を定量的に評価することを目的とする。 平成22年度は、(1)顔認識注視点走査時に被験者に提示する検査ビデオの作成、(2)人工内耳装用非ASD児、人工内耳装用ASD児、正常対照群に対して顔認識注視点走査を施行した。検査ビデオは画面を通して被験者に語りかける、または被験者と手遊び歌を行う言語聴覚士の様子を撮影した。この際、言語聴覚士の背後には、おもちゃやカレンダー等を置く様にした。このビデオを用いて検査を行った結果、正常対照群は、過去の報告(Warren et al. Arch Gen Psychiatry. 2008 ; 65 : 946-54)と同様に、言語聴覚士の顔、特に目に注目したのに対し、人工内耳装用ASD児はほとんどの時間、周りのおもちゃやカレンダー、または動く口や指を注視していた。興味深いことに、2歳代以上で人工内耳埋め込み術を施行した5名の人工内耳装用非ASD児は、言語聴覚士の顔を注視するが、目ではなく口を注視する傾向が強く、1歳前半で人工内耳手術を施行した3名の非ASD児は目を注視する傾向が強かった。これは聾学校で行っていた口唇読話訓練の影響が考えられた。当初は、眼注視時間が長い方がコミュニケーション能力が高く、ASDの程度が軽度であると予想していたが、難聴児の場合は必ずしも当てはまらない可能性が示唆された。 本研究は、健聴のASD児の自閉傾向評価として用いられている他覚的検査を初めて難聴児に対して施行したものであり、顔認識注視点走査が難聴児を対象とした検査として適切か否かを検討することは臨床的に重要である。今後、より多くの被験者を対象に検査を行い、眼注視時間と人工内耳装用効果を統計学的に検討すると共に、より適切なパラメーターを検討する必要がある。
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