2010 Fiscal Year Annual Research Report
コチレニンAによる網膜分化、抗腫瘍および神経保護の可能性の追求
Project/Area Number |
22791649
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
柏木 佳子 山形大学, 医学部, 教務補佐員 (90375345)
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Keywords | コチレニンA / 網膜芽細胞腫 / PAX6 |
Research Abstract |
我々はこれまで、真菌由来ジテルペノイド化合物であるコチレニンAが、網膜芽細胞腫細胞株Y-79・WERI-Rb-1細胞に対して、細胞増殖抑制およびアポトーシスを誘導すること、網膜発生時に発現するPAX6遺伝子や視細胞特異的に発現するRhodopsin遺伝子のmRNAの発現を誘導することを明らかにし、コチレニンAが網膜芽細胞腫に対して腫瘍の性質を変化させて網膜分化を誘導する可能性を見出した。一方で、ヒトやマウスのPAX6遺伝子のmRNAには、正常なPAX6 mRNA、エクソン(5a)配列が挿入されたPAX6(5a)mRNA、PAX6の重要なドメインであるPaired-domain(PD)をコードしている塩基配列が欠損したPAX6(ΔPD)mRNAの3つが存在することが報告されており、さらにPAX6(5a)mRNAから翻訳されたタンパク質は、胎児中の網膜発生に関与していることが明らかにされている。これらの報告から、コチレニンAが、網膜芽細胞腫細胞株において網膜発達に関与するPAX6 nRNA誘導されるかを探索した。その結果、Y-79とWERI-Rb-1細胞において、コチレニンAによって、網膜発達に関与するPAX6(5a)mRNAは誘導されず、正常なPAX6 mRNAの転写が活性化されることを明らかにした。一方で、WERI-Rb-1においてのみ、コチレニンAはPAX6のエクソン3と4の間に存在するプロモーターを活性化し、エクソン5が欠損したスプライスバリアントPAX6(Δexon5)mRNAを誘導することを明らかにした。コチレニンA誘導性のPAX6(Δexon5)のmRNAからは、PDが欠損したタンパク質が翻訳されこと、報告されているPAX6(ΔPD)mRNAの1種であると推察されたが、PDが欠損したPAX6タンパク質がどのような機能を持つかについては未だ不明なことが多いため、今後は、コチレニンAが誘導するPAX6(Δexon5)が網膜発達に関連するかを明らかにしたい。以上のほかに、コチレニンAは、網膜芽細胞腫細胞株に対してヒストン脱アセチル化阻害作用は持たないことを明らかにし、これまで報告されている酪酸ナトリウムなどの分化誘導剤とは異なった分化誘導機序をもつ可能性を見出し、これらをまとめてMolecular Visionに報告した。
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