2010 Fiscal Year Annual Research Report
タイムラプス観察を用いた網膜血管新生のダイナミズムを制御する新規分子機構の解明
Project/Area Number |
22791654
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村上 智昭 京都大学, 医学研究科, 助教 (50549095)
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Keywords | 網膜血管新生 / タイムラプス観察 / VEGF / アクチン / glycogen synthase kinase (GSK)-3β / stromal-derived factor (SDF)-1 |
Research Abstract |
我々は、網膜器官培養を用いて、VEGFにより誘導される網膜新生血管のダイナミクスの定量化を行った。つまり、新生血管の先導端の動きを15分ごとにその変位量を測定したところ、興味深いことに、前進と後退を著しく繰り返しながら、進行していくことが示された。また、観察から約12時間ごろに血管新生が一時的に停滞する時間帯が見られた。それを制御している分子として、新たにSDF-1を同定した。つまり、SDF-1の中和抗体、もしくは、その受容体の阻害剤を投与すると、血管新生の伸張が緩やかになり、また、先導端の前進、後退の両者が抑制された。それはすなわち、SDF-1が血管内皮細胞の運動性を制御することを証明する新たな知見であった(Unoki et al. IOVS 2010)。また、糖代謝に関わる分子であるglycogen synthase kinase (GSK)-3βは、糖尿病において重要な役割を果たすが、その血管新生への影響はほとんどわかっていない。我々は、網膜器官培養を用いて、その阻害剤であるAR-AO14418とSB-216763の効果を検討したところ、網膜血管新生は用量依存性に抑制された。タイムラプス観察を行うと、新生血管の運動性が低下しており、今後詳細な定量化を行う予定である。更に培養血管内皮細胞を用いた実験で、GSK-3β特異的阻害剤によりアクチンのストレスファイバーが増加し、血管内皮細胞の細胞膜がretractionを起こしていることが分かった。GSK-3βのアクチンのregulatorへの影響はよくわかっておらず、今後糖代謝、すなわち、糖尿病が、如何に網膜症を惹起するのか、その分子機構を明らかにしていく予定である。
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Research Products
(4 results)