2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22791658
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森本 壮 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00530198)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 網膜神経保護 / 電気刺激治療 / 難治性視神経症 |
Research Abstract |
本年度は前年度に引き続き3つの研究課題を並行して行った。 研究I電気刺激による視覚再生のメカニズムの解明の検討。今年度は、我々がこれまでに見出したInsulin-like growth factor-1(IGF-1)が網膜内で発現が上昇するメカニズムの解明に取り組んだ。血中IGF-1が電気刺激によってどの程度網膜内への流入するのか検討した。ヒト由来のrecombinant-IGF-1(h-IGF-1)をラットの尾静脈に注射し、片眼のみに電気刺激を1時間行い、もう片眼はsham刺激を行い、刺激後に、網膜を取り出し、タンパクを抽出し、h-IGF-1抗体を用いてELISA法を行い、網膜のタンパク量1μg中に存在するhIGF-1のタンパク量を求め、電気刺激眼とsham刺激眼の網膜のhIGF-1の合有量を検討した。結果T電気刺激を行った眼の網膜1μg中のhIGF-1の量は平均43.4+/-18.6 ngに対し、sham刺激群では網膜タンパク1μg中に平均18.7+/-9.14 ngと刺激眼のhIGF-1量が有意に上昇した。次に電気刺激による軸索再生の促進効果の検討については、培養網膜神経節細胞(RGC)を用いたin vitroでの電気刺激の実験系を確立した。 研究II電気刺激の効果と神経保護効果を有する薬剤との相乗効果の検討。前年度より継続して行なっている課題で抗酸化ストレス製剤であPeroxiredoxin 6(PRDX6)を用いて網膜内でどの程度酸化ストレスが抑えられるか検討した。結果、視神経切断直後から7日後まで酸化ストレス(活性酸素種)が持続的に発生しており、PRDX6を投与した場合7日後でも酸化ストレスを抑制していることが判明した。 研究III 電気刺激治療のプロトコールの確立および適応の決定とより長期の治療効果の検討についても症例数が順調に増えており、次年度に解析予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究Iについては、Insulin-like growth factor-1(IGF-1)の網膜でのタンパク発現を調べる実験系の確立に時間を要したたことと、これまでの成果についての論文の作成が遅れている。培養細胞での軸索再生の実験系の確立に時間を要したため、軸索再生の研究を行うことができなかった。 研究IIについても、PRDX6が一時入手困難になったため実験が遅れた。 また、研究IIIについても、症例数が当初予定より少なく、本年度に治療結果についての解析に着手できなかった。 以上よりやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、引き続き取り組んでいる研究I視覚再生のメカニズムの解明の継続、 研究II電気刺激の効果と神経保護効果を有する薬剤との相乗効果の検討、研究III電気刺激治療のプロトコールの確立および適応の決定とより長期の治療効果の検討の研究を継続し、論文作成に着手する。 研究Iについては、昨年度より取り組んでいる電気刺激による網膜内IGF-1の増加に関する、IGF-1と血液網膜関門との関連について検討する。また軸索再生の促進効果についても、培養網膜神経節細胞(RGC)を用いた電気刺激による軸索再生の実験系を昨年度に確立したのでそれを用いて軸索再生の促進効果について検討していく。 研究IIについては、抗酸化ストレス剤であるPRDX6と電気刺激の併用効果についての研究を継続する。具体的にはPRDX6と電気刺激の相乗効果の検討、特に長期的に電気刺激の神経保護効果を持続させるためにPRDX6をどのように投与すべきかについて検討する。 研究IIIについては、本年度も引き続き電気刺激治療の臨床研究を進め、症例数増やし、治療データを積上げていく。得られた臨床成績について詳細に検討し、治療の適応の決定、長期成績について検討していく。 以上、上記研究の継続とともに得られた研究成果について随時、論文作成を行う。 また、昨年度の研究過程において、培養RGCの細胞死を調べる方法としてラマン散乱を用いたラマン顕微鏡を用いる方法に着目し、RGCの細胞死を観察するのに有用である可能性が高いため、これを用いてRGCの細胞死を観察する研究もあわせて行う。さらに、視神経損傷の新たな動物モデルとして下肢懸垂ラットモデルを作製し、電気刺激の視神経保護効果を検討するために用いることができるか検討する。本年度は、本研究の完遂を目指して研究を行う。
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