2010 Fiscal Year Annual Research Report
ABCトランスポーターの網膜血管新生における役割の解明
Project/Area Number |
22791660
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
楠原 仙太郎 神戸大学, 医学研究科, 助教 (40437463)
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Keywords | ABCトランスポーター / MRP4 / 血管新生 / 網膜血管内皮細胞 / RNA干渉 |
Research Abstract |
ATP-binding cassette (ABC)トランスポーターは物質輸送に関係する膜タンパク質である。Multidrug resistance protein 4 (MRP4, ABCC4)はABCCサブファミリーに属し、内因性分子、生理物質、薬剤などの細胞外排泄を介して各組織の保護に働いている。我々はMRP4と網膜血管新生との関係についての機能解析を行った。 1.研究内容 ヒト網膜毛細血管内皮細胞(Human retinal vascular endothelial cells (HURECs))におけるMRP4の機能解析につきRNA干渉を用いた培養実験を行い以下の結果が得られた。 (1)血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor, VEGF)刺激後のMRP4mRNAの発現は刺激後24時間では濃度依存的に減少していた。2nM濃度のVEGF刺激では0nM刺激と比較して51%のmRNA量減少を示した(P=0.030)。 (2)細胞増殖アッセイでは、5_-bromo-2_-deoxyuridine (BrdU)の取り込みはMRP4ノックダウン細胞とコントロール細胞で同等であった(P=0.320)。遊走アッセイでは、MRP4ノックダウン細胞はコントロール細胞に対して31%の遊走増加を示した(P=0.048)。 (3)MRP4ノックダウン後のアポトーシスについては、MRP4ノックダウン細胞ではコントロールと比較して、血清除去後12時間では54%(P<0.001)、24時間では27%(P=0.004)、とcleavod-caspase3陽性細胞は有意に減少していた。 (4)チューブ形成アッセイでは、MRP4ノックダウン細胞は集簇してチューブに沿った異常凝集形態を呈した。チューブ長についてはMRP4ノックダウン細胞でコントロールに比べて53%長いという結果であったが有意差は認められなかった(P=0.411)。MRP4ノックダウン細胞における異常凝集についてVE-cadherinを介した細胞間接着の関与を疑ったが、免疫染色ではアクチンフィラメントの重合や細胞間接着部位へのVE-cadherinの動員は認められなかった。 2.研究の意義 本研究は、MRP4が網膜血管新生において特異な形で抑制的に働いているというエビデンスを初めて示した点で斬新である。 3.研究の重要性 MRP4の発現が病的網膜新生血管でのみ低下しているという過去の我々のデータと併せて考えると、MRP4が糖尿病網膜症などの網膜血管新生疾患において重要な役割をしている可能性が高く、将来の臨床応用への足がかりになると思われる。
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Research Products
(3 results)