Research Abstract |
本年度はヒト培養細胞を用いてアレルギー炎症で放出されるサイトカインがバリアー機能に影響するか検討した。 SV40で不死化した角膜上皮細胞をtranswellにて培養し,バリアーを形成したことが確認できた後,24時間無血清培地で培養した。その後,アレルギー炎症で発現が上昇しているTh2サイトカインを添加して一定時間(6~72時間)培養後、上皮膜抵抗を測定することで電気的バリアーの変化を検討した。 Th2サイトカイン(IL-4, IL-5, IL-10, IL-13)のうち,IL-4とIL-13が濃度依存的に角膜上皮細胞の上皮膜抵抗(TER)を減弱させた。IL-4は0.01ng/mlから,IL-13は0.1ng/mlから有意な作用を示し,共に10ng/mlでピークに達した。またこれらの作用はサイトカイン添加後,12時間から認められた。 角膜上皮細胞のIL-4/IL-13受容体複合体の蛋白およびmRNAの発現について,flowcytometry法およびRT-PCR法を用いて検討したところ,IL-4Rα, IL-13Rα1を発現していた。IL-4およびIL-13の共通の受容体であるIL-4Rαの中和抗体をサイトカイン添加前に細胞に作用させると,IL-4およびIL-13で認められTERの減弱が抑制され,これらの作用はIL-4/13受容体を介した作用であると考えられた。 IL-4/IL-13のバリアー低下作用のメカニズムを調べるために,バリアーの形成・維持に重要な因子であるタイトジャンクションの構成因子ZO-1およびocculudinの発現を検討した。それぞれの特異抗体を用いた染色により,角膜上皮細胞は細胞間にZO-1およびocculudinを均一に発現していたが,IL-4およびIL-13を添加するとその発現が低下する部分が認められた。従って,IL-4とIL-13は角膜上皮細胞に受容体を介して作用し,タイトジャンクションを構成するZO-1やocculudinの発現の低下を介して,バリアー機能を低下させることが明らかとなった。 またヒト培養結膜上皮細胞にもIL-4およびIL-13の受容体が発現していることが確認でき,現在種々の因子のバリアー機能に与える影響について検討中である。
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