2010 Fiscal Year Annual Research Report
双方向の再生軸索を含む新しい神経移植法に関する研究
Project/Area Number |
22791721
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
谷川 知子 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (00571407)
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Keywords | 神経移植 / 顔面神経再建 / 双方向の再生軸索 |
Research Abstract |
耳下腺の悪性腫瘍の切除後の欠損は耳下腺内を走行する顔面神経の欠損を伴うことが殆どであり、それにより顔面神経麻痺が生ずる。顔面神経の1期的な再建は欠損部の顔面神経を補うように神経移植をするのが一般的であるが、顔面神経は1本の本幹が耳下腺内で多数の枝に分岐している。従来の神経移植は数本の移植神経を束ねて1本の本幹に縫着してきたが、顔面神経の中枢断端は多くの場合、深部に存在し手技的に大変困難であった。移植神経を1本にして、複数ある顔面神経とは端側吻合することが考案され、この術式の有用性は検証された(Matsuda K et al. J Plast Reconstr Aesthe Surg 2008 61 (11) : 1357-1367.)。本研究はさらに移植神経の遠位端に神経を吻合することにより、1本の移植神経に2か所以上から再生軸索の流入が起こるか否かの検証をすることである。本年度は移植神経の一本の移植神経内に双方向の軸索再生が起こるのか否か、また、それが長期にわたって維持されるのかをThy-1 YFPトランスジェニックマウス(Feng G et al. Neuron 2000 28 (1) 41-51)坐骨神経モデルを用いて検証した。このマウスでは黄色の蛍光を発するタンパクが知覚、運動ニューロンに特異的に発現しており、蛍光顕微鏡下で再生軸索が可視化されるため、移植神経内の双方向の軸索を直接観察することが出来る。マウスの片側の坐骨神経の腓骨神経、脛骨神経分岐部より末梢を約5mmの長さで切除し、神経欠損を作成した。野生型マウスの尺骨神経を採取し一方の断端を腓骨神経に、もう一方の断端を脛骨神経に縫合した。移植された神経の側面に神経周膜までの開窓を二箇所行い、それぞれに腓骨神経、脛骨神経の遠位断端を縫合した。術後2週間、4週間、12週間で移植神経の近位ならびに遠位を含めて一塊に採取し、レーザー共焦点顕微鏡で観察した。腓骨神経から脛骨神経へ、脛骨神経から腓骨神経へ向かう軸索が観察されたため、移植神経が双方向の再生軸索を含むことが証明された。
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