2012 Fiscal Year Annual Research Report
新鮮遺体を用いたMDCTによるリンパ管立体解剖の解析
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22791735
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山崎 俊 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60464856)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | リンパ管 / 新鮮遺体 / 解剖 / MDCT / リンパ浮腫 |
Research Abstract |
平成22年の実験で新鮮遺体の下肢のリンパ管造影に成功し、さらにMDCT(multi detector computed tomography)を用いて造影した下肢の三次元画像の取得に成功した。その手法を引き続き使用してリンパ管を造影した下肢の検体数を12まで増やすことができた。さらに膀胱癌によるリンパ節廓清をされた続発性リンパ浮腫を呈した新鮮遺体のリンパ管造影、及びMDCT撮影に成功した。実験の手法は平成23年までの手法を継続して行っている。 まず、正常検体の症例数の増加によって徐々にリンパ管走行の個体差、及びその割合がわかってきた。下肢の集合リンパ管の走行は大きく大伏在静脈に沿った大伏在リンパ管群と小伏在静脈に沿った小伏在リンパ管群に分けることができる。一般的に小伏在リンパ管は膝窩で深部のリンパ管に合流するとされているが、①深部リンパ管に合流するもの、②深部に入らず大伏在リンパ管に合流するもの、③大伏在リンパ管が深部に合流するもの、といった症例がみられた。この知見は足に生じたメラノーマなどの皮膚悪性腫瘍の転移のメカニズムを解明する手がかりとなる。特に足底に生じたメラノーマは症例により転移するリンパ節が異なる場合があり、その裏付けとなりうる。 そして、リンパ浮腫を生じた検体をMDCTで撮影することに成功し、その画像を解析した。その結果、正常検体と比べて以下のことが判明した。①大伏在リンパ管の走行経路に差は認めなかった。②集合リンパ管どうしの吻合が密になっていた。③リンパ浮腫患者のリンパ管造影検査で認められる造影剤の皮膚逆流現象(Dermal Back Flow)を検体でも認めた。これらの所見は、リンパ浮腫治療において重要な所見となる。また、現時点でリンパ浮腫を呈したリンパ管のCT画像は存在せず、有用な情報となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始当初は下肢以外のリンパ管の解剖も行う予定でったが、現時点では下肢以外の研究まで進んでいない。理由としては以下があげられる。①下肢のリンパ管に当初想定した以上に変異が認められ、より多くの検体数が必要となった。②リンパ管は弁の機能によって逆流しないため、より正確に解剖構造を調べるためにはより多くの部位でリンパ管を同定、造影を行う必要がある。下肢の場合面積が広くなり、必然的に造影作業に時間がかかる。③リンパ浮腫の治療のためには四肢の研究をより深く行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も下肢のリンパ管解剖を重点的に行っていく。近年のリンパ浮腫に対する手術や画像技術の発達により、これまで不明であったリンパ管の走行が徐々に解明されてきた。しかし、基礎となる解剖の研究は不十分である。そのため今後も下肢の検体数を増やしていくことを重点的に行う。さらに現時点では膝窩より抹消での深部リンパ管の造影は行っておらず、今後は末梢での深部リンパ管も含めた造影を行っていく。
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