2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22791769
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
加藤 文紀 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (70452589)
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Keywords | 黄色ブドウ球菌 / 遺伝子発現 / 転写制御因子 / 病原性 |
Research Abstract |
伝染性膿痂疹(とびひ)および新生児に発症するブドウ球菌性熱傷様症候群の原因毒素である黄色ブドウ球菌表皮剥脱毒素の新規転写抑制因子SptAおよびSptBは黄色ブドウ球菌の病原性因子をグローバルに制御することをこれまでに明らかにしており、これら両転写制御因子による詳細な遺伝子発現制御機構の解明を目的とした。SptAのアミノ酸相同性検索の結果、黄色ブドウ球菌のMurR、表皮ブドウ球菌のMurRとそれぞれ54%および72%のアミノ酸の同一性、特にリガンド認識に重要なSIS領域において非常に高い同一性が見出された。MurRとは細胞壁の主要な構成因子であるペプチドグリカンのリサイクルおよびターンオーバーにおいてN-アセチルムラミン酸の代謝遺伝子群の転写制御因子であり、SptAはN-アセチルムラミン酸6リン酸をリガンドとして認識することが強く示唆された。さらにSptAのリガンド認識領域であるSIS領域のアミノ酸置換変異体の解析から、リガンド認識において重要なクレフト領域に位置する191番目のグルタミン酸がリガンド認識に置いて重要であること、およびSptAはリガンドが結合した状態でリプレッサーとして機能することが強く示唆された。この結果は、病原性因子の発現制御が生体内代謝産物を感知することで制御されていることを示唆し、病原性因子発現制御機構において新規な制御機構を提唱するものである。またN-アセチルムラミン酸は細菌に共通した細胞壁構成因子であり、異種細菌間シグナル伝達物質として注目されている物質でもある。一方、SptBタンパク質のDNA結合領域はEMSA解析の詳細な解析結果から、sptB班遺伝子自身のプロモーター領域、表皮剥脱毒素遺伝子のコーディング領域に結合することを明らかにした。さらに本研究において黄色ブドウ球菌におけるin-frame遺伝子欠損株の作製方法およびplasmid vectorに関する論文がJournal of Microbiological Methodsに掲載された。この方法により黄色ブドウ球菌において遺伝子機能を解析するための非常に有効な多重遺伝子欠損株の作製が可能となった。
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Research Products
(7 results)