2010 Fiscal Year Annual Research Report
迷走神経刺激による咀嚼筋の血流改善効果とその末梢性及び中枢性神経機構
Project/Area Number |
22791796
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
石井 久淑 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (00275489)
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Keywords | 副交感神経 / 血管拡張反応 / 迷走神経 / 求心性刺激 / 咀嚼筋 / 末梢性神経機構 |
Research Abstract |
本研究は迷走神経の求心性刺激を用いた咀嚼筋の血流改善法を確立するために必要とされる最適な刺激条件、全身機能への影響及びそれら反応のメカニズムに関する基盤的データを得ることを目的としている。本年度(平成22年度)は迷走神経の求心性刺激が咀嚼筋の血流動態及び全身の循環機能に与える影響とそれらの末梢性神経機構について検討した。その結果、1)頸部迷走神経の求心性刺激は咀嚼筋(咬筋)に副交感神経性血管拡張反応を誘発する及び2)この血管拡張反応は体幹血圧には影響しないことが明らかになった。したがって、迷走神経の求心性刺激は咀嚼筋の血流維持に有効であり、全身の循環動態に与える影響も少ない優れた咀嚼筋の血流改善法に応用できる可能性が示唆された。最近、咀嚼筋の副交感神経性血管拡張反応は迷走神経による血圧低下時において、顔面・頭部領域の血液供給を担う総頸動脈の血流維持に関わることが明らかになった。これらは、咀嚼筋の副交感神経性血管拡張反応は咀嚼筋のみならず、顔面・頭部領域全体の血流維持においても重要な役割を演じていることを示唆している。 咀嚼筋の疼痛や疲労は顎・顔面・頭部領域の慢性的な機能障害(顎関節症、ブラキシズム及び頭痛など)に最も多く認められる症候であり、これらの機能障害には同領域の血流障害が関連していることが報告されている。しかし、これら血流障害の詳細なメカニズムは不明であり、根治的な治療法も確立されていないのが現状である。したがって、本研究による副交感神経性血管拡張反応を応用した新たな血流改善法の確立は、これら疾患の予防や治療のアプローチを新たな展開に導くことが期待される。
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