2010 Fiscal Year Annual Research Report
ウィントシグナルによる関節表層細胞の機能制御機構の解明
Project/Area Number |
22791799
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
安原 理佳 昭和大学, 歯学部, 助教 (20453649)
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Keywords | 関節軟骨 / 再生医学 / 細胞・組織 / 遺伝子 / 軟骨 / Wnt/β-catenin |
Research Abstract |
関節軟骨は層状に積層した軟骨細胞と特殊な軟骨基質から構成される硝子軟骨であり、滑膜とともに、関節の動きを円滑にするための大事な組織である。しかし、関節軟骨は再生・修復能が低く、加齢や損傷による機能不全が変形性関節症の原因となる。このため、関節軟骨の再生、維持機構の解明は重要な課題であるが、未だ不明な点が多い。そこで、関節表層を覆う表層細胞に着目し、表層細胞の性質や細胞維持機構の解明を目的として本研究課題に取り組んだ。その結果、正常関節表層ではWntシグナルが強く発現しており、軟骨特異的にβ-catenin欠損したマウスの関節表層は菲薄化し、lubricinの発現が減少する事を見出した。一方で、軟骨特異的β-catenin活性化マウスでは、関節表層の細胞数が増加し、lubricinを発現する細胞の領域が増大した。また、単離培養した関節表層細胞は紡錘形で、軟骨細胞とは明らかな形態的な違いを示し、軟骨基質であるAggrecanやMatrillin-1の発現は低く、lubricinやERG、幹細胞マーカーであるCD105,CD34を高く発現していた。Wnt3Aで刺激した表層細胞は増殖能が高く、継代培養に伴うlubricinの発現の減少を抑制した。一方で、β-cateninを培養系で欠損させると、表層細胞の増殖が抑制され、増殖刺激に対する反応も非常に減弱した。以上の結果から、関節表層の細胞は軟骨前駆細胞様の特性を保持する細胞であり、Wnt/β-cateninシグナルは表層細胞の細胞増殖、cell survivalやおよびlubricinの発現などの関節の機能維持の調節に関与する事が示唆された。今後、関節軟骨でのWnt/β-cateninシグナルの制御機構の解明と関節軟骨の再生・修復へ向けた関節表層細胞の応用に向けて検討を行う。
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