Research Abstract |
高齢社会における使用頻度の増加に伴い,カルシウム拮抗薬(特にニフェジピン)による歯肉増殖症患者は増えている。この疾患の発症にニフェジピン感受性歯肉線維芽細胞(NIFr)が関与していることは分かっているが,詳細な機序はいまだ不明である。そこで本研究では,ニフェジピン歯肉増殖症の発症機序を解明するために,ニフェジピン非感受性歯肉線維芽細胞(NIFn)を対照として,リポ多糖の存在下におけるNIFrの細胞周期およびアポトーシス制御機構について,APOPercentage^<TM> apoptosis assay kit,CycleTEST^<TM> PLUS DNA reagent kit,Caspase colorimetric assay kit,Western blot analysisを用いて検討し,以下の結果を得た。NIFrは細胞周期進行の亢進とアポトーシス誘導の低下を示した。NIFrではBaxおよびCytochrome cタンパク質の発現とCaspase-3および9活性の有意な減少を認めた。またp53,Bcl-2,Bcl-xL,Badのタンパク発現,そしてCaspase-2および8の活性においてNIFrとNIFnの間に相違は認められなかった。Bad,Bax,Bid,Bim,Cytochrome c,p53,Caspase-2,-3,-8,-9はアポトーシス誘導因子であり,Bcl-2およびBcl-xLはアポトーシス抑制因子である。本研究から,ニフェジピン歯肉増殖症の発症機序はNIFrのBax,Cytochromec,Caspase-3,-9の低下によるアポトーシス機能低下と関係があると考えられる。 また,薬物性歯肉増殖症の原因薬物として,フェニトインおよびシクロスポリンAが知られている。本研究では,これら薬物による歯肉増殖症の薬物療法確立のために以下の実験を行い,結果を得た。ヒト歯肉線維芽細胞を用い,フェニトインおよびシクロスポリンのアポトーシス抑制・細胞増殖促進作用に対する18αおよび18β-グリチルレチン酸の効果を検討した。18α-グリチルレチン酸はフェニトイン存在下で培養された細胞のアポトーシスを誘導し増殖を抑制した。18β-グリチルレチン酸はシクロスポリンA存在下の培養細胞に対してアポトーシス誘導・増殖抑制効果を示した。
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