Research Abstract |
本研究は,象牙質接着修複において重要な要素となる,象牙質への接着システムの浸透に関するものである.一般に,接着システムの浸透は走査電子顕微鏡にてレジン-象牙質接着界面を観察することで検討されるが,高度真空下での観察のため,観察試料体の損傷が危惧される.そこで,本研究では試料損傷の危険が少ない共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)での観察を行った.接着システムに蛍光色素を混入する本方法で,浸透の観察に適し,且つ接着に影響を及ぼさない蛍光色素の濃度の特定を行うことで,浸透と接着の関係が明確となり,また,象牙質接着研究において浸透を観察する新たな手段を確立できると考えた. プライマーの浸透を観察するために,蛍光色素・ローダミンBをメガボンドFAプライマーに配合した.配合するローダミンBの濃度は,プライマーに対してOwt%, 0.05wt%, 0.06wt%, 0.07wt%, 0.08wt%, 0.09wt%, 0.1wt%および0.2wt%の8群に設定した.それぞれの群において歯面処理を行い,コンポジットレジンを積層築盛した接着試料体を用いて,CLSMでのレジン-象牙質接着界面の観察および象牙質微小引張接着強さについて検討を行った. その結果、プライマーに配合するローダミンBの濃度が0.05wt%以上0.07wt%以下では,象牙質微小引張接着強さは,ローダミンBを配合しないコントロール群と同等であり,プライマーに配合するローダミンBが接着強さに影響を与えないことが明らかとなった.また,CLSMの観察には0.07wt%以上0.1wt%以下の濃度が適することが明らかとなった.したがって,メガボンドFAにおいてローダミンBの添加が接着強さに与える影響を考慮すると,CLSMを用いたレジン-象牙質接着界面の観察に際しては,プライマーに配合するローダミンBの濃度は0.07wt%が望ましいと考えられた.
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