2011 Fiscal Year Annual Research Report
骨再生用ナノコーティングスキャフォールドを用いた歯周組織再生療法の開発
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22791916
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮治 裕史 北海道大学, 大学病院, 講師 (50372256)
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Keywords | ナノ材料 / 再生医学 / 細胞・組織 / スキャフォールド / 骨再生 |
Research Abstract |
ナノ技術を応用した歯周組織再生療法の開発を目的として,本研究ではナノリン酸カルシウムでコラーゲンスポンジをコーティング処理したスキャフォールドを作成し,生体への効果を組織学的に検討した.昨年度に引き続き,スキャフォールドの特性評価を行った.細胞付着性試験では,スキャフォールド表面に細胞が付着伸展することを認め,親和性が良好であることを確認した.スキャフォールドの圧縮強度試験では最大でコラーゲンスポンジの2.1倍の強度向上を認めたが,ばらつきが多く統計学的有意差を検出できなかった.またラット頭蓋骨上への移植実験を継続した.移植試料は,線維芽細胞増殖因子(FGF2)30μg添加スキャフォールド,FGF2添加コラーゲンスポンジ,スキャフォールド,コラーゲンスポンジとし,コントロールとして移植しない群を設定した.観察期間35日における組織学的計測の結果,骨形成においてFGF2添加スキャフォールドはコントロールと比較して1.7倍,スキャフォールドのみと比較して1.6倍の骨形成が認められたが,FGF2添加コラーゲンスポンジの1.2倍程度であった.一方生体内での吸収量に関して,スキャフォールドはコラーゲンスポンジの40倍程度吸収量が多かった.また,平成23年度よりイヌ実験的歯周組織欠損モデルへの移植実験を開始した.スキャフォールド移植術後の歯肉の治癒は良好で歯肉退縮も少なく,肉眼的に術後経過は良好であった.X線による経時的観察を行った結果,骨再生の目安である不透過性の亢進はスキャフォールド移植群で促進されていた.以上の結果から,ナノリン酸カルシウムコーティングスキャフォールドは細胞やFGF2との親和性が高く,in vivoでは骨形成促進効果は不十分であるが,吸収性・組織置換性が向上することが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度はビーグル犬を用いて効果を検討する予定であったが,当初の計画通りビーグル犬の歯周組織欠損部への移植実験は順調に行われ,X線写真のデータはすでに取得され,組織学的評価のための標本も作成された.また,実験モデルの拡大を行い,骨に直接移植した場合の骨再生のデータを取得するために,抜歯窩にスキャフォールドを移植する検討を追加し,大量のデータを取得できた.ナノβ-TCPスキャフォールドの特性については平成22年度に引き続き追試験を行い,β-TCPの粒度分布,SEM-EDSによる元素分析,圧縮強度,細胞付着性試験等でスキャフォールドの性質を同定できた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度はビーグル犬歯周組織欠損モデルおよび抜歯窩における移植実験をさらに追加し,組織標本の作製と組織学的評価をおこなう.ラットの移植実験は終了するが実験遂行に余裕があればβ-TCP処理スキャフォールドの条件を変えて追試験を行う.ラットおよびイヌでのデータを総合的に判断して,ナノβ-TCPスキャフォールドの有効性を判定する.また,イヌ歯周組織欠損モデルにおいてBMPによる根面処理およびコラーゲンハイドロゲルとの併用効果を検討し,新たな歯周組織再生療法としての確立をめざす.
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Research Products
(4 results)