Research Abstract |
Angiogenin (ANG)の遺伝子を欠損させ,その影響からANGの生理的機能を調べるために,ANG遺伝子のノックアウトマウスを作製した.ヒトANGに相同するマウスANGは6種のアイソフォームが存在する.マウスANG-1はヒトANGと相同性が最も高く,組繊分布(主に肝臓)が同じであり、血管新生能をもつため,これをノックアウトした. 8週齢の野性型とKOマウスの胃,直腸,腎臓,肝臓,肺,脳,心臓,脊髄の組繊切片を作製し病理学的検索を行ったが。血管異常は認められなかった.血管異常を認めない理由を検索するため.マウスANG-2,3,4,5,6遺伝子の発現を調べたところ,すべての臓器で発現上昇を認めた.ANG-1以外のANGにより.機能が代償されて表現型がマスクされていると推察された. ANG-2は肺,ANG-3は前立腺,ANG-4は直腸,にそれぞれほぼ特異的に発現する.ANG-5,6の分布はよく分かっていない.血中を循環するANG-2,3.4,5,6の影響を排除するため,組織から細胞を単離しさらに検討を加えた.ANG-1遺伝子の欠損が血管内皮細胞の増殖能に与える影響を調べるために,野性型とKOマウスの肝臓から血管内皮細胞を単離し培養した.野性型と比較して,KOマウスの血管内皮細胞の増殖は,抑制されていた.細胞ストレスに与える影響を調べるために,血清飢餓状態で培養すると,KOマウスの血管内皮細胞はストレスに感受性が高くアポトーシスが誘導されていた.ANGがアポトーシスの抑制に関与している,ことが分かった.さらに野性型とKOマウスの背部皮下にMatrigelを注入しMatrigel Plug Assayを行った.KOマウスでは野性型と比較し血管新生が抑制されていた. 以上からANGが血管新生や血管の恒常性維持に重要であることが明らかとなった.
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