2010 Fiscal Year Annual Research Report
歯の発生過程におけるマスピンの役割に関する分子細胞生物学的研究
Project/Area Number |
22791986
|
Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
徳山 麗子 鶴見大学, 歯学部, 助教 (20380090)
|
Keywords | 歯 / マスピン / セリンプロテアーゼインヒビター / 歯の発生 |
Research Abstract |
高齢社会を向かえた日本で再生医療は最も注目される研究分野の一つであり、その中でも歯の再生医療は強く望まれる分野の一つである。再生医療実現に向けて、その発生・成熟過程における分子機構を解明することが必要不可欠と考えられるが、未だ未解明である。歯の発生・成熟過程においては、細胞外基質の産生・分泌・蓄積のため、さまざまな蛋白質分解酵素およびそのインヒビターが重要な役割を果たす。そこで本研究では歯の発生・成熟過程における分子機構の解明を目的に、これまでわれわれが骨組織の成熟に関与することを報告してきた、セリンプロテアーゼインヒビターであるマスピンに着目し、歯の発生過程における生理的役割について検討した。まず、歯の発生過程におけるマスピンの発現について、雷状期、帽状期、鐘状期前期、.鐘状期後期において免疫組織学的に検討したところ、雷状期、帽状期においてはマスピンの発現は認められなかったが、細胞外基質の成熟の始まる鐘状期初期から、各種歯原性細胞にマスピンの発現が認められるようになり、歯冠形成期にかけてその発現は保たれていた。このことから、マスピンは歯の発生過程において何らかの生理的役割を担っていることが示唆された。さらに、このことを確認するために、胎性20日齢ラットの下顎骨から第一大臼歯を摘出し、器官培養(organ culture)を行い、その時にマスピンの中和抗体を添加しマスピン蛋白質の機能を阻害し培養したところ、歯胚の成熟過程において、経時的にコントロール群と比較して、歯原性細胞における細胞外基質の蓄積が有意に阻害され、正常な象牙質、エナメル質の形成が遅延または阻害された。これらの結果は、マスピンが歯の成熟過程においで必須であり、その細胞外基質の成熟に重要な役割を果たしていることを示す結果であると考えられる。今後はさらにマスピンの歯の発生過程における役割を詳細に検討する予定である。
|