2010 Fiscal Year Annual Research Report
Hedgehogシグナルを標的とした口腔癌の新規治療法の開発
Project/Area Number |
22792008
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
田中 章夫 明海大学, 歯学部, 助教 (30406392)
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Keywords | Hedgehogシグナル / 口腔扁平上皮癌 / Sonic Hedgehog / Ptch1 / Gli1 / Gli2 / Smoothened / 免疫組織化学的検索 |
Research Abstract |
【背景と目的】癌幹細胞に対する治療はその特徴である自己複製能を制御することが重要であり、その自己複製のメカニズムは正常組織幹細胞と同じ分子機構を利用している。Hedgehog (Hh)シグナルは、胎生期の形態形成に重要な役割を果たすシグナル伝達経路の一つであるが、近年様々な癌でリガンド依存性にHhシグナルが活性化し、癌の発生・進展に関与していることが明らかにされている。このことは、これらの癌細胞がシグナル伝達により制御できる可能性を示しており、Hhシグナル制御が新たな分子標的治療の候補と考えられる。本研究では口腔癌で未だ解明されていないHhシグナルについて、その関連因子の発現を検索してシグナル伝達経路の詳細を明らかにし、さらにそのシグナルを制御することにより口腔癌の増殖・進展で重要な役割を果たす癌幹細胞を標的とした新たな治療法の開発を目的とする。【方法】術前治療の行なわれていない舌癌(扁平上皮癌)の切除検体材料(ホルマリン固定パラフィン包埋材料)38例を用い、Hhシグナル関連因子の発現を免疫組織化学的に検索した。【結果】Sonic Hedgehog (Shh)は38例中27例(71.1%)に発現を認め、浸潤部の腫瘍細胞に強く発現している傾向が見られた。また、Patched1 (Ptch1)は38例中34例(89.5%)で高い発現率を示した。一方、Smoothened (Smo)およびGli1は38例中15例(39.5%)で、その発現は弱く部分的であった。更にGli2は全ての症例で発現を認めなかった。【考察】今回の研究で、これまで明らかにされていなかった口腔扁平上皮癌におけるShhの発現を確認することが出来た。受容体である膜貫通型蛋白のPtch1も高い発現を示しており、腫瘍細胞がautocrineによりHhシグナルの調節を行い、癌の増殖や転移に大きく関与している可能性が考えられた。また、受容体複合体のコンポーネントであるSmoや、その下流に存在する転写因子Gliファミリーを介した標的遺伝子の転写・活性化については、更なる解析が必要であると考えられた。
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