2011 Fiscal Year Annual Research Report
Hedgehogシグナルを標的とした口腔癌の新規治療法の開発
Project/Area Number |
22792008
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
田中 章夫 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (30406392)
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Keywords | Hedgehogシグナル / 口腔扁平上皮癌 / Sonic Hedgehog / Ptch1 / Gli1 / Smoothened |
Research Abstract |
【背景と目的】本研究では口腔癌で未だ解明されていないHhシグナルについて、その関連因子の発現を検索してシグナル伝達経路の詳細を明らかにし、さらにそのシグナルを制御することにより口腔癌の増殖・進展で重要な役割を果たす癌幹細胞を標的とした新たな治療法の開発を目的とする。先の免疫組織科学的検索の結果から、口腔扁平上皮癌における各種Hhシグナルの発現を確認することが出来た。その結果、腫瘍細胞がautocrineによりHhシグナルの調節を行い、癌の増殖や転移に大きく関与している可能性が考えられた。本研究では細胞株における蛋白レベルでの検索を目的とする。【方法】本研究室で保有する口腔扁平上皮癌由来細胞株のH1、H1R、SA、SARから抽出した細胞溶解液をSDS-PAGEで電気泳動後、ニトロセルロース膜に転写し、Hhシグナル関連因子に対応する抗体を反応後、DAB反応で発色させ、蛋白レベルでの発現状況について検索する。【結果】SHH、SMOはいずれの細胞株においても強い発現を認めた。一方Gli1の発現は全ての細胞株で認めたが、その発現は弱いものであった。また、Ptchの発現はSAのみで認められた。【考察】各種口腔扁平上皮癌由来細胞株におけるShhの高い発現を認めたが、その受容体である膜貫通型蛋白のPtch1は細胞株によってその発現度が異り、遺伝子レベルでの制御が行なわれていることが考えられた。一方、Ptch1によって抑制されるはずのSMOの発現は高く、腫瘍細胞が自立的にSMOを活性化させることによって、癌の増殖や転移に大きく関与している可能性が考えられた。以上の結果から、シグナル阻害因子によるHhシグナルの制御の可能性を含めた遺伝子レベルでの解析が必要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
術前治療の行なわれていない舌癌(扁平上皮癌)の切除検体材料(ホルマリン固定パラフィン包埋材料)38例を用い、Hhシグナル関連因子の発現を免疫組織化学的に検索した。検索の結果、これまで明らかにされていなかった口腔扁平上皮癌におけるShhやその受容体である膜貫通型蛋白のPtch1も高い発現を認めたことは、大きな成果と考えられた。術前加療の行なわれていない生検材料はその症例数が制限されることから、更なる追加材料による症例数の蓄積が課題と考えられた。 口腔扁平上皮癌由来細胞株を用いた蛋白レベルでの検索では、Shhの高い発現を認めたが、その受容体である膜貫通型蛋白のPtch1は細胞株によってその発現度が異り、免疫組織化学的検索の結果とは必ずしも一致しなかった。そのため、遺伝子レベルでの更なる解析が必要であると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、口腔癌におけるHhシグナル関連因子の発現を検索してシグナル伝達経路を明らかにするため、切除検体材料および各種口腔扁平上皮癌由来細胞株におけるHhシグナル関連因子の蛋白発現を検索を行なってきた。その結果、口腔扁平上皮癌では各種のHhシグナル関連因子の発現を確認することが出来た。 今後はHhシグナル制御による口腔癌の増殖・進展の阻止を明らかにするため、シグナル抑制因子を培養細胞に加えて、Hhシグナル関連因子の遺伝子レベルでの発現の検索を行なう。また、Hhシグナル抑制による口腔扁平上皮癌の増殖・進展阻止について検索を行なう。Hhシグナルを制御する因子には、Shhに結合する抗Shh抗体(5E1モノクローナル抗体)、Smoの活性を特異的に阻害するCyclopamine、Jervine、SANT-2、Gli1の機能を阻害するGANT61などがあり、それぞれ癌細胞の増殖を抑制することが報告されている。よって、これらのHhシグナル経路阻害因子によるinhibition assayによる腫瘍細胞の増殖・浸潤能の評価を行なう。 以上、これらの検索から得られた結果をまとめて最終的に本研究の総括を行なう。
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