2011 Fiscal Year Annual Research Report
歯肉上皮細胞の防御機能制御による新規歯周病予防法の開発
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22792087
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
藤田 剛 広島大学, 病院, 助教 (80379883)
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Keywords | 歯肉上皮細胞 / 宿主防御機能制御 / イルソグラジンマレイン酸 / アジスロマイシン / claudin-1 / E-cadherin / IL-8 / 歯周病予防 |
Research Abstract |
これまでの報告から,胃粘膜防護薬であるイルソグラジンマレイン酸がラット歯肉炎症モデルにおいて歯周病原性細菌Aggregatibacter actinomycetemcomitans存在下の歯肉上皮細胞が産生するIL-8などの炎症性サイトカインの発現を抑制し,また上皮細胞間の細胞間接着因子E-cadherin,claudln-1の発現を制御することで細胞間バリアー機能の低下を回復し,炎症を制御することを報告してきた。このことから,イルソグラジンマレイン酸は歯周病の予防薬としての可能性が考えられる。本研究では,抗菌薬として知られているアジスロマイシンが,本来の抗菌作用に加えて,A.actinomycetemcomitans存在下の歯肉上皮細胞が産生するIL-8の発現を抑制することで抗炎症効果を持っていることを示した。またそのシグナル経路として,イルソグラジンマレイン酸と同様にERKのリン酸化が関与することを解明した。さらに,アジスロマイシンはA.actinomycetemcomitans刺激によって低下したE-cadherinを回復した。これらのことから,薬剤により歯肉上皮細胞の防御機能を制御できること,またその結果歯周病を予防できる可能性が示された。また,LPS刺激下のラット歯肉から接合上皮をレーザーマイクロダイセクションで切り出し,DNA マイクロアレイで分析した結果,接着因子であるclaudin-1が有意にLPSによって抑制されることが明らかとなった。このことから,歯周病の発症においてclaudin-1が重要な役割を担っており,イルソグラジンマレイン酸によるclaudin-1の制御は歯周病予防に有用であることが示唆された。 宿主側の防御機能の制御という新しい予防の概念を確立する基礎的研究としての成果が得られ,さらなる詳細な薬理作用の解析,また臨床研究に移行する基盤ができたと考えられる。
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