2011 Fiscal Year Annual Research Report
糖化最終産物の受容体を介した歯周病と糖尿病の悪化メカニズムの解明
Project/Area Number |
22792088
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
内田 雄士 広島大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (40363080)
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Keywords | 糖尿病 / 歯周病 / 糖最終産物 / S100 |
Research Abstract |
糖尿病と歯周病の関連性は密接であることは近年周知の事実である。しかし、そのメカニズムに関しては炎症性サイトカインの関与は調べられているが、その他のメカニズムに関する研究は少ない。そこで、炎症と糖尿病において重要な役割を担っていると言われている糖化最終産物受容体(RAGE)とそのリガンドであるS100タンパク質に焦点を置き、糖尿病と歯周病との相互作用について検討した。歯周病患者の歯肉におけるS100タンパク質の発現は健全歯肉と比較して、その発現は増加していた。歯周病原細菌(Actinobacillus actinomycetemcomitan)は歯肉組織においてS100タンパク質の発現を誘導した。また、そのSlOOタンパク質を歯肉上皮細胞に作用させたとごろ、高濃度のS100タンパク質はRAGEを介して細胞間コミュニケーション(GJIC)を低下させる。しかし、低濃度のS100タンパク質は短期間の作用ではGJICを促進させる結果が出た。高濃度でのGJICの変化はそれを担っているギャップジャンクションの構成タンパクであるコネキシンの発現が低下していることが関与していると考えられる。低濃度のS100タンパク質がGJICを促進していることは、ギャップジャンクションの発現量ではなく、ギャップジャンクションのリン酸化がGJICを促進している結果を得た。また、炎症性サイトカイン(IL-8)発現は、時間、濃度依存的に増加していた。IL-8はGJICを低下させるという報告があるが、今回の実験結果ではIL-8の発現は関与していないという結果が出た。歯周病原細菌によって誘導される歯肉上皮のS100タンパク質は炎症性サイトカインを誘導する一方で、細胞間接着装置の一つであるギャップジャンクションを介した細胞間コミュニケーションに影響を与えることが示唆された。このように、S100タンパク質はRAGEを介して歯周炎の惹起に関与していると考えられる。
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