2011 Fiscal Year Annual Research Report
薬物によりポケットリダクションを図る新たな歯周薬物療法への展開
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22792101
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
長野 孝俊 鶴見大学, 歯学部, 助教 (10386914)
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Keywords | ヒト歯肉線維芽細胞 / ヒト歯根膜細胞 / アジスロマイシン / IL-6 / IL-8 / NF-κB |
Research Abstract |
マクロライド系抗菌薬の一種であるアジスロマイシン(AZM)を併用して全顎のスケーリング・ルートプレーニング(SRP)を行う歯周薬物療法を施術することにより、早期に患者の歯肉の炎症や腫脹が改善され、歯周ポケットが減少するという報告が散見されるが、その治癒メカニズムの詳細は明らかとなってはいない。そのため、AZMの歯周組織への影響を分子生物学的手法で検索した。 ヒト歯肉線維芽細胞においてAZMを作用させると、濃度依存的にIL-6とIL-8の遺伝子発現が増強することが初年度の研究で明らかになったが、本年度は試料としてヒト歯根膜細胞を用い、ヒト歯根膜細胞に対するAZMの反応性を検索するために各種バイオアッセイを行って、ヒト歯肉線維芽細胞におけるAZMの影響と結果を比較した。その結果、双方において細胞増殖能には影響を与えないことが確認された。また、ヒト歯根膜細胞ではIL-6やIL-8の遺伝子発現はさほど増強されなかったため、これらの炎症性サイトカインのAZMによる増強反応は、歯肉組織に対して特異的なものである可能性が示唆された。 また、ヒト歯肉線維芽細胞の炎症性サイトカインの亢進反応が、細胞内シグナル伝達経路の中でも、どの経路を介した反応なのかを検討するため、ウエスタンブロット法を用いてタンパクレベルでの解析を行ったところ、NF-κBのシグナルを介する反応であることが明らかになった。 以上のことから、ヒト歯周組織に対するAZMの作用の一部がさらに明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までにヒト歯肉線維芽細胞を使用した基礎実験は予定通り終了したため、本年度はヒト歯根膜細胞を用いた研究を行った。培養条件の検討など、実験系の確立にやや時間を要したが、ヒト歯肉線維芽細胞とヒト歯根膜細胞に対するアジスロマイシンの影響について比較が出来る基礎データがほぼ出揃ったため、(2)の区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究で、アジスロマイシンの影響による炎症性サイトカインの亢進が、ヒト歯肉線維芽細胞に特異的な反応であることが明らかになりつつあるので、今後も追加実験を行って、どの細胞内シグナル経路をたどる反応なのかその詳細を明らかにする予定である。また、この反応が他の抗菌薬ではなぜ生じないのか、他の抗菌薬を用いた追加実験を行って、この点に関しても検討を加える予定である。
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Research Products
(2 results)