Research Abstract |
本研究では,申請者らが開発した嚥下内視鏡による食塊形成機能評価法を川いて,口腔のどのような1人1子が食塊形成に関与するかを検討することを目的としている. 前年度の結果から,高齢者では若年成人と比べて食塊の集合度が低いことが示された.本年度は,高齢者30名を対象に,口腔のどのような因子が食塊形成機能に影響を与えるかを検討した.食塊形成機能評価の被検食はこれまでに申請者らが報告した報告と同様,2色(白と緑)の米飯を用いることとした.咀嚼回数を規定すると不自然な食塊形成となるため,被検食を「普段通り食べて下さい」と指示したときに咽頭に送り込まれた食塊を内視鏡にて評価を行った.その結果,咬合支持の状態を3群に分け(咬合支持あり,一部あり,無し),3群間で多重比較を行ったが,食塊形成の程度との間に有意な関係は認められなかった.唾液分泌量と食塊形成の程度には,粉砕度,混和度,集合度ともに相関関係が認められた(スピアマン順位相関).咀嚼回数と食塊形成の程度には,粉砕度,混和度では相関が認められたものの,集合度には有意な相関が認められなかった(スピアマン順位相関).また,唾液分泌量と咀嚼回数,咬合支持には有意な相関は無く,それぞれ独立した因子であることが示された,食塊形成の状態を目的変数,唾液分泌量,咀嚼回数,咬合支持を説明変数とした重回帰分析の結果,唾液分泌量は3つの指標すべてで有意に関連していたが,咀嚼回数は混和度のみに関連し,咬合支持はいずれとも関連が認められなかった.昨年の結果から,食塊が嚥下閥に達するには集合度が重要であることが明らかとなっている.したがって以上の結果から,高齢者の食塊形成機能には,集合度に影響を与える因子である唾液分泌量が重要であることが明らかとなった.
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