Research Abstract |
近年増加傾向にあるGERDは,早急に対応が必要な疾患の1つである.現在GERDの治療の主流である薬剤による胃酸分泌抑制は,奏功しない例や副作用が出現する例も多く、他の対処法が必要とされている.そこで我々は,食道クリアランス能に注目し,これに関わる因子として唾液の分泌量,嚥下頻度が関係していると考えた.しかしながらGERDと唾液や嚥下頻度の増減との関係を検討した報告はない.そこで本研究では,GERDに対する治療メニューを構築するために,唾液と嚥下頻度がGERDに及ぼす影響を検討し,以下の結果を得た.《唾液量および嚥下頻度とGERDの自覚症状の強さとの関係》GERDの既往のない成人を被験者としてGERDの自覚症状をF-scaleにて評価し,質問内容から酸逆流症状(項目R)と消化管運動不全症状(項目D)の項目に分けた.被験者を1)安静時唾液量,2)嚥下頻度の各項目で2群に分類し,1),2)による自覚症状の強さの変化をそれぞれ調べた.その結果,唾液量が少ない群(安静時唾液1.5ml/15分以下)の各項目の平均点は,R:4.7,D:3.8,多い群はR:2.4,D:2.2となり.唾液量の少ない群において項目Rが有意に高い値を示した.一方,嚥下頻度の少ない群(安静時17回/30分以下)の各項目の平均点はR:4.8,D:4.1,多い群はR2.8,D:2.5となり,両項目で嚥下頻度の少ない群の方が高い値を示した(有意差なし).本研究の結果、唾液分泌量や嚥下頻度が減少した症例は,GERD症状を強く自覚する傾向にあり,GERDの発症や症状の増悪と関連していることが示唆された.また,嚥下頻度については,他の研究において,加齢や経口摂取禁止例などの嚥下機能の廃用を疑う症例で有意に低下することを示した.これらのことは,高齢や嚥下障害がGERD発症の一因となる可能性を示唆していると考えられた。
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