2011 Fiscal Year Annual Research Report
摂食・嚥下障害患者に安全に経口摂取させるための科学的根拠に基づいた代償姿勢の検討
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22792126
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
戸原 玄 日本大学, 歯学部, 准教授 (00396954)
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Keywords | 摂食・嚥下障害 / 誤嚥 / 診断 |
Research Abstract |
摂食・嚥下障害を持つ患者に対して安全に食べさせる姿勢として、座位ではなくリクライニングの姿勢が推奨されてきた。有用な方法ではあるものの、実際には座位のほうが誤嚥が生じない患者も存在するにもかかわらず、盲目的に安易にこのような代償姿勢で食事をしている症例が存在するため、リクライニングの姿勢が嚥下機能にどのような影響を及ぼすかを検討した。 食道入口部は通常閉じており、嚥下時に開大する。リクライニングの姿勢がこの食道入口部の圧にどのような影響を及ぼすかを検討した。その結果、健常男性に対して評価を行ったところ、食道入口部の安静時(食事以外の時)の圧力はリクライニングを行うことにより、有意に増加することがわかった(中山ら,2011,Nakayama et al,2012)。また、嚥下時の食道入口部の圧力は大まかに3つの波形にわけられる。最初にあらわれるE波(elevation wave)は喉頭挙上時に圧センサーが持ち上げられるために発生する陽性波、HSP波(hypopharyngeal suction pump wave)は嚥下時に食道入口部が開大するために起こる陰性波、Ch波(constriction nwave)は嚥下中に咽頭が収縮するために起こる陽性波である。健常男性に対しての検討結果では、有意ではないが上記のHSP波がリクライニングにより増加(陰性波がえられなくなる)ことがわかった。以上より、リクライニングにより喉頭にかかる重力の方向が下方ではなく背側に向くため、嚥下時に喉頭が前方に移動するのを妨げる可能性があると考えられた。
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