2010 Fiscal Year Annual Research Report
抗癌剤による嗅覚障害の実態とその早期発見による栄養状態の維持を指向した探索的研究
Project/Area Number |
22792176
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
菅 幸生 金沢大学, 薬学系, 助教 (00467101)
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Keywords | 癌化学療法 / 嗅覚障害 / 栄養障害 |
Research Abstract |
本年度は、金沢大学医学部倫理審査委員会に当該臨床研究を実施するために研究内容の倫理審査申請を行い、承認された。がん化学療法による嗅覚障害の実態を明らかにするために、嗅覚障害、味覚障害の発現頻度およびこれらを誘発しやすい化学療法レジメンの調査と味覚障害と嗅覚障害の関連を解析した。がん化学療法を施行した19%に嗅覚障害、55%に味覚障害がみられた。嗅覚障害の発現リスクが有意に高いレジメンは特定できなかったが、パクリタキセル、ドセタキセル、FOLFOX(オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、ロイコボリン)、FOLFIRI(イリノテカン、5-フルオロウラシル、ロイコボリン)、FEC(5-フルオロウラシル、エピルビシン、シクロホスファミド)、ビノレルビンを施行した患者で嗅覚障害がみられた。一方、味覚障害については、ゲムシタビンで有意に発現リスクが高かった。さらに、味覚障害を有する患者では、味覚障害がない患者に比べ、嗅覚障害の発現リスクが有意に高かった。以上のことから、嗅覚障害はがん化学療法により生じる頻度が高い有害事象であることが示唆された。また、味覚障害を有する患者では、嗅覚障害を合併するリスクが高いことが示唆されたため、味覚障害の訴えがあった患者では嗅覚障害の合併も考慮したケアが必要であると考えられた。これらの結果は、がん化学療法を行う患者の適切なケア、薬学的管理を行う上で、非常に重要な成果である 本年度の予定に栄養状態と嗅覚異常の関連を解析することも加えていたが、栄養状態の評価を患者に断られることが多く、症例数が十分ではないため、この解析は次年度に再検討することとした。
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