2011 Fiscal Year Annual Research Report
記憶行動とシナプス形態を制御する遺伝子発現調節因子の作用機序の解明
Project/Area Number |
22800011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野中 美応 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特任助教 (30583885)
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Keywords | 記憶形成 / 遺伝子発現 / 転写因子 |
Research Abstract |
CREBは記憶の長期化に必須な転写因子であり、本研究の中心であるCRTC1はその転写の強さを大幅に調節する「アンプ」である。活性型CRTC1を用いてCRTC1-CREB経路を人工的に増強すると、c-fos,Arc,BDNFといった記憶形成の立役者(最初期遺伝子)の発現が増強されることが明らかになっている。 本年度は、1)CRTC1の核移行と転写活性化のメカニズムをより詳細に追究するため、プロテオミクスも含めた生化学的実験を計画した。また、2)CRTC1活性型及び発現抑制ウイルスでマウスの記憶行動への影響を評価するにあたり、発現期間と刺激強度を検討した。さらに、3)行動実験に用いた動物脳内のシナプス形態を解析できるよう、ウイルスや解析条件を検討した。 その結果、1-1)CRTC1の内在性リン酸化部位・結合タンパク質を多数同定した。1-2)ChIPアッセイの実験手技を改良し、代表的な最初期遺伝子のプロモータ領域へのCRTC1の結合を示した。1-3)神経活動に関係なく薬剤に応答して核移行するCRTC1変異体を用いた実験を行い、他の生化学実験の結果と総合して、CRTCIの核移行が真にCREBリン酸化とは独立した経路であることを示した。さらに、2)ウイルスによる海馬特異的なCRTC1活性型発現が記憶を増強し、逆にCRTC1発現抑制が長期記憶形成を障害することを示した。 以上の成果を、SfN 2011,Washington DCにて発表し、国際誌に投稿改訂中である。
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