Research Abstract |
持続的情報連携サービス分析方法論の研究では,異なる組織や社会で創造・蓄積される多様な情報を利用者が柔軟に連携して活用するための持続的な情報連携サービスを分析する方法論を確立するために,初年度に以下の成果を達成した. まず,持続的情報連携サービス分析方法論の構想を提案するとともに,要素研究として,3階層情報連携アーキテクチャならびに情報連携コミュニティ分析技法,情報連携アーキテクチャ分析技法を具体化した.また,情報連携コミュニティ分析技法,情報連携アーキテクチャ分析技法に基づいて名古屋大学の情報環境を分析し有効性を確認した. 情報連携コミュニティ分析技法については,要求工学におけるアクター関係分析手法ならびに,アクターネットワーク理論と活動理論の共通性を解明することにより,コミュニケーション構造を明らかにするとともに,情報連携活動を分析するために活動分析票を考案して有効性を確認した.とくに,活動分析票の定義では,情報システムに関する活動を人間活動という,より基本的な概念に基づいて分析設計する手法を提案した.すなわち,(1)活動主体,(2)事前状態,(3)活動対象(となるシステム),(4)事後状態,(5)契機(イベント),(6)応答(レスポンス),(7)活動手順,(8)入力,(9)出力,(10)活動規則,(11)関係者,(12)関係者の役割に基づいて,人間活動を記述する.この人間活動モデルを用いた連携活動の記述では,連携主体と連携対象を連携手順と対応付けて管理できる.また連携手順の内容を,連携契機,応答,入出力,連携規則,連携関係者とその役割分担まで含めて記述できるようにしたことで,従来は曖昧になりがちだった連携規則やその役割分担を明確化できる.さらに,本手法を名古屋大学における実際に運用中の情報サービスに対して適用評価することにより,運用知識を効果的に抽出できることを確認した.
|