2011 Fiscal Year Annual Research Report
神経成長因子のがん増殖抑制作用とその機序解明に関する研究
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22800045
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高取 真吾 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (20368707)
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Keywords | 神経成長・栄養因子 / Nerve growth factor / がん新生血管 / 血管周囲神経 / 抗腫瘍効果 |
Research Abstract |
細胞増殖能を指標としたin vitro評価系(一次スクリーニング)においてnerve growth factor (NGF)によるヒト肝がん細胞(HepG2)およびヒト大腸がん細胞(DLD-1)に対する直接的な影響について検討した。その結果、DLD-1細胞増殖に対してNGFは有意な抑制効果を示したが、HepG2細胞増殖に対して著明な変化は認められなかった。さらに、前年度に引き続く一次スクリーニングにおいて、NGFの著明な細胞増殖抑制効果が確認されたヒト前立腺がん細胞(DU145)およびDLD-1細胞に対してNGF受容体(TrkA)拮抗薬であるK252aを処置した条件下で検討したところ、いずれの細胞においても濃度依存的かつ著明な増殖抑制効果が確認された。 また、ヌードマウスにがん細胞を移植後、浸透圧ポンプを用いてNGFを持続皮下投与し、HepG2細胞およびDLD-1細胞増殖に対する影響をin vivo評価系において検討した(二次スクリーニング)。NGF投与終了後、tail cuff法による血圧測定およびレーザー血流計を用いて腫瘍組織表面の血流量を測定後、腫瘍組織を摘出して切片を作成し、腫瘍内血管周囲神経分布について二重免疫染色法を用いて検討した。HepG2細胞の増殖はNGF処置により有意に抑制され、腫瘍組織血流量の著明な低下、腫瘍組織内における血管平滑筋の増加とその周囲に血管周囲神経の分布が観察された。一方、NGFはDLD-1細胞増殖を抑制せず、腫瘍組織の血流量にも影響を及ぼさなかった。さらに、腫瘍組織内の血管周囲神経および血管平滑筋の分布に対するNGFの影響も観察されなかった。また、いずれの群においてもNGF持続投与による全身血圧の変化は認められなかった。 以上の結果より、NGFの腫瘍増殖抑制作用の機序として、NGFが血管周囲神経を分布させることで新生血管の成熟化を誘導し、腫瘍内血流量が調節され、腫瘍への血液供給が減少したためであることが考えられる。しかし、その作用にはがん種による種差が存在することが示唆される。
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Research Products
(3 results)