2011 Fiscal Year Annual Research Report
国民体育大会が都市空間にもたらした影響に関する歴史社会学的研究
Project/Area Number |
22800066
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
高尾 将幸 東洋大学, ライフデザイン部, 助教 (60584381)
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Keywords | スポーツと都市 / 国民体育大会 / 戦災復興 |
Research Abstract |
本研究は第5回国民大会(愛知国体)を事例として取り上げ、スポーツと都市が取り結んできた関係性の一端を、歴史社会学的に明らかにすることを目的としている。 まず、戦災復興都市計画に関する行政文書等の史料に関しては、購入可能なもの以外については大部分が名古屋市鶴舞中央図書館および名古屋市市政資料館にて収集することができた。これまでの体育・スポーツ史研究では、戦後の国民体育大会に対して国家主義やナショナリズムの発露といった政治的側面が強調される傾向にあったが、収集した史料からは都市計画に関与する市行政官や政治家、さらに財界のアクターたちの愛知国体開催に向けて独自の方針で動こうとしていた事実が解明された。この点は従来の説では説明できないものであり、本研究の成果であると言える。 より具体的には、名古屋市内の各種スポーツ施設建設(当時としては極めて大規模)の費用が市負担および財界の寄付金によってその大部分が工面されたこと、また金山駅周辺の交通網および鉄道網の総合的な戦災復興開発という文脈の中で金山体育館が建設されていたこと、さらに国体パンフレット作成等をはじめ観光関連施策が鉄道会社や百貨店などの民間企業と市行政官との協働のなかで動いていたことなどが挙げられる。名古屋市の総経費約2億1700万円に比して、国庫補助はわずか1400万円程度であることを鑑みても、国家的なイベントとしてイニシアティブが発揮されたとは言い難いのが実情であったと言える。 なお、以上の史料については項目ごとにファイリング保存するとともに、スキャナを利用した電子データによる保存作業と目録作成を行なった。とりわけ、今回の研究期間内に名古屋市市政資料館内で膨大な量の新しい資料を閲覧・複写することができたが、それら史料の保存状態は極めてよく、今後の研究に少なからず資するものと思われる。
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