2011 Fiscal Year Annual Research Report
施設入居高齢者におけるビタミンD栄養状態と肺炎および死亡に関するコホート研究
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22800072
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Research Institution | Osaka Shoin Women's University |
Principal Investigator |
桑原 晶子 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 講師 (00582602)
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Keywords | 施設入居高齢者 / ビタミンD / 上気道感染症 / 死亡 |
Research Abstract |
本研究では、施設入居高齢者におけるビタミンD栄養状態と上気道感染および肺炎の罹患、死亡との関係を明確にするための2年間のコホート調査を実施した。解析対象者は、調査開始時に血中ビタミンD(250HD)濃度の測定ができた者、かつ調査開始時から1ヶ月以上の追跡ができた者208名(M/F;38/170)とした。平均観察年数は、1.8±0.6年であり、打ち切り例は32名であった。観察期間中、上気道感染症47件/100人年、肺炎13件/100人年、両者を合わせた感染症総合60件/100人年、死亡10件/100人年であった。死亡または感染症総合の有無でビタミンD関連指標を比較した結果、血中250HD濃度については両イベントで有意差はなく、血清PTH値は死亡群で有意に高値を示した。 次に、ビタミンD欠乏(250HD 10ng/mL未満)を含む背景因子と死亡または感染症との関係を、年齢・性別調整をしたCOX比例ハザードモデルにて検討した。死亡についてはBMIおよびガンの既往が有意に寄与し、血清アルブミン、総コレステロール、eGFR、リンパ球数、対数化PTHで寄与傾向を示した。一方、感染症では、喘息の既往が有意に寄与し、血清総コレステロール値、活性型ビタミンDの服用、糖尿病の既往、対数化血清PTH、ビタミンD欠乏が寄与傾向を示した。上記の因子を用いて多変量COX回帰分析を行った。その結果、死亡では年齢とBMIが有意に寄与し、対数化PTHは(HR,1.70,95%CI;0.80-3.61)であった。感染症では、性別、年齢、喘息の既往が有意に寄与し、ビタミンD欠乏は(HR,1.29,95%CI;0.86-1.93)となった。 以上より、施設入居者におけるビタミンD栄養状態(250HD値,PTH値)の、死亡および感染症への有意な関係は認められなかったが、寄与の傾向は示唆された。
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