2011 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス状態における脳・自律神経ネットワークに対する多元的相互影響性の定量評価
Project/Area Number |
22800073
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Research Institution | Aino University |
Principal Investigator |
林 拓世 藍野大学, 医療保健学部, 講師 (40582862)
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Keywords | ストレス / 感性・情動・感情 / 脳・神経 |
Research Abstract |
本研究では,「ストレス状態に関連した脳・自律神経機能活動の多元的相互影響性について定量評価」することを目的とした.具体的には,ストレス状態における脳機能評価には脳波と機能的磁気共鳴画像法(fMRI),自律神経機能評価には心電図と脈波を用い,「情動ストレス負荷により活性化する特異的及び普遍的脳機能活動領域の特定」により,「慢性ストレス状態における脳機能活動影響性の評価」をした.更に,「急性及び慢性ストレス状態における脳深部領域-脳皮質神経-末梢神経機能間の相互影響性」を評価することで,「正常時とストレス状況下における脳・自律神経機能について,統合的に相互影響性の違い」からストレス状態の正確な把握を行った. その結果,記憶処理を担う海馬では,ストレス状態に関わらず活動性が示された.一方,情動に特化した処理を担う扁桃体では,高ストレス保持者は低ストレス保持者と比較して信号強度に有意差は認められなかったものの,活動の反応性や安定性に低下が認められた.また,高ストレス保有者は,不快情動刺激により上頭頂回と下頭頂回の活動性が有意に低値を示したことから,認知に関連した処理に影響を生じていると示唆された.脳機能と自律神経機能の相互影響性については,ストレス反応の得点により重回帰分析した結果,安静刺激時(自由度調整済みの決定係数(R^2)=0.164)と不快刺激(R^2=0.156)において,右下頭頂回の信号強度と平均脈波一周期時間の間で関連性が認められた. 以上の結果より,健常者におけるストレス状態に伴う脳機能及び自律神経活動の影響性が示され,特に頭頂回における認知機能の低下は初期の段階から生じると示唆された.また,本研究の結果は,特定の領域に焦点を当てた治療や,ストレスによる負担状況を正確に把握する指標となることが期待される.
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