Research Abstract |
行動遺伝学は,身長や性格などに表れる個人差に対する遺伝と環境の影響を推定する学問である。遺伝と環境はそれぞれ2つに分類され,行動遺伝学では本来,表現型の個人差に対して相加的遺伝,非相加的遺伝,共有環境,非共有環境の4つの要因が影響していることが仮定されているが,数理的制約によりこのうちの3要因までしか同時には推定可能ではなかった。研究代表者は,この数理的制約を高次積率を用いた構造方程式モデリングによって克服することに成功し,この方法について国際学会にて発表を行った(Ozaki,K,2012)。また,今年度は,この方法の実データへの適用も試みた。その成果は未発表であるが,その前段階として3要因を用いた方法を発達心理学データに適用し,2つの国際誌に成果が発表された(Fujisawa,K.K.,Ozaki,K,Suzuki,K.,Yamagata,S.,Kawahashi,I.,&Ando,J.,2012およびFujisawa,K.K.,Yamagata,S.,Ozaki,K.,&Ando,J.,2012)。前者の論文では,乳幼児期の頭囲の発達と自閉症傾向との関係を遺伝と環境の観点から論じ,自閉症の早期発見の可能性を探った。また,後者の論文(Fujisawa,K.K.,Yamagata,S.,Ozaki,K,&Ando,J.,2012)では,ネガィブな養育態度と問題行動との遺伝的・環境的つながりが,注意欠陥多動性障害傾向の程度によって変化するという,交互作用効果について論じられている。
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