2010 Fiscal Year Annual Research Report
Neuroligin変異を持つ自閉症モデルマウスのシナプス機能異常の解明
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22800081
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
江頭 良明 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 特別協力研究員 (80582410)
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Keywords | 自閉症 / シナプス接着因子 / neuroligin / neurexin |
Research Abstract |
本研究課題は、自閉症のモデル動物として提唱されている、シナプス接着分子neuroligin3に変異を持つノックインマウスの脳において、シナプス機能とシナプス微細構造を解析することを目指す。特に本年度は、電気生理学的手法によって、体性感覚野のシナプス機能の解析を重点的に行った。その結果、抑制性シナプスでは、シナプスの数の減少を反映していると考えられる機能低下が観察され、また逆に、興奮性シナプスでは、シナプスの数の増加を反映していると考えられる機能亢進が観察された。次年度以降で形態学的解析を行い、実際にシナプス密度が変化しているかどうかを検証するが、もし今年度得られた電気生理学的知見と一致した結果が得られれば、これは自閉症モデルマウスで興奮性応答の劇的な亢進(興奮性シナプスの増加だけでなく、抑制性シナプスの減少による相乗効果)が起こるということを示し、自閉症病態を理解する上で大変重要な知見になると期待される。 また本年度において、次年度に計画していた同モデルマウスの海馬でのシナプス可塑性についても一部解析し、予備データを得た。注目すべき事項は、記憶形成の細胞基盤とされる長期増強(LTP)について、自閉症モデルでは、LTPの初期相は野生型と同レベルであったのに対し、後期相が選択的に起こらなくなっていたことである。この事実は、同マウスでは平常時からLTP後期相が飽和状態にあることを意味し、空間学習能力の向上を示した先行研究との関連を示唆する。次年度以降でさらに解析を進めたい。
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