2011 Fiscal Year Annual Research Report
チベット文化圏における放牧地利用の疎密に応じた資源管理制度の創出
Project/Area Number |
22810013
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 哲由 京都大学, 東南アジア研究所, 研究員 (50447934)
|
Keywords | 牧畜 / 放牧地利用 / 資源管理 / 社会変化 / インド / 中国 |
Research Abstract |
牧畜地域では,水場の位置や市場への近さなどの放牧地立地条件によって,それぞれの放牧地の利用状況には粗密がみられ,そのことが放牧負荷の偏在と部分的な過放牧を引き起こしている場合がある。さらに大きな視点でみた場合,同様の生態環境であっても地域の位置によって牧畜が盛んな草地がある一方で,都市に近い地域では農外就労が盛んでほとんど放牧に利用されない草地もみられる。本研究では,これら放牧地利用の疎密が生じる状況を検証するとともに,偏った放牧地利用を解消する方法を提言することを目的とした。 本年度は8~9月にかけてインド北西部ジャンムーカシミール州ラダックに位置するドムカル村とチャンタン地区において現地調査をおこなった。ドムカル村に関してはすでに2年間の調査を継続しておこなっている。全世帯(183世帯)の家族構成や経済状況,農牧業の概要を把握し,それぞれの世帯が所有する農耕地や放牧地の位置を衛星画像上で確認している。 本年度は,それらの土地や放牧地の利用状況のクロスチェックをかけるとともに,抽出したサンプルの放牧地において植生調査をおこない,放牧地の状況を確認するとともに,衛星画像を用いた村落全体の放牧地状況の評価を試みた。 本年度から新たに調査を開始したチャンタン地区は,ラダックで最も牧畜がさかんな地域であり,専業的に牧畜を営む世帯も多い。しかし,近年はラダック中心都市であるレーに移住する世帯も増えており,地区内でも場所によっては多くの家畜が集中する草地と利用されにくい草地がみられる。今年度は,カルナックやコルゾクといったこの地区に属する4つの集落を訪問し,人口や家畜頭数,移動牧畜のスケジュールと草地の分布に関する聞き取り調査をおこなった。 調査に基づきドムカル村とチャンタン地区の比較をおこない,さらに各地域内で放牧地利用の粗密が生じる構造を明らかにし,その背景を検証した。
|