2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22820012
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原田 敦史 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教 (90584657)
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Keywords | 中世文学 / 軍記物語 / 平家物語 / 保元物語 / 平治物語 / 承久記 |
Research Abstract |
本年度の第一の成果は、前年から続けてきた『平家物語』研究に関して、読み本系的な母体から語り本が立ち上がってくる過程について、本文だけでなく文学的な読解に基づく見取り図と提示した論考を発表し、『国語と国文学』誌に掲載されたことである。王法の歴史語りという枠組みの中で頼朝の興隆と平家の衰亡を対照的に語るという読み本系的な構図を崩し、平家滅亡の歴史へと焦点を当てるという新たな文学的手法によって、語り本が自らの個性を獲得していった過程を、巻六の世界を中心として析出した。これによって、『平家物語』が読み本系と語り本系という二大系統に別れて流動していった軌跡を俯瞰することが可能になったと考える。 続く成果は、上記論考に集約される『平家物語』研究を踏まえて、『保元物語』『平治物語』という別作品に目を向け、古態といわれる諸本の世界を新たな視点で解き明かしたものである。『平家物語』に比して、「古態本」の評価がはっきりしている両作品をめぐって、『保元物語』の源為朝、『平治物語』の藤原信頼と源義朝という、それぞれの世界の中心となる人物像がどのように物語の構造を支えているかを読み解いたものである。二本の論考はいずれも、今後刊行予定の著書に収載する予定なので、雑誌発表はしていない。 また、諸本論の進展が遅れている『承久記』についても考察し、諸本本文の関係についての考察をまとめることができた。現存諸本がどのように派生し流動していったのか、流布本と前田家本を対象として分析したもので、近く公表できる予定である。
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Research Products
(1 results)