2010 Fiscal Year Annual Research Report
破壊と創造‐歴史的破壊の経験が19世紀フランス文学にもたらした影響の考察
Project/Area Number |
22820013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
数森 寛子 東京大学, 総合文化研究科グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター」, 特任研究員 (10588239)
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Keywords | 仏文学 |
Research Abstract |
本研究は、19世紀フランス文学のあらゆる位相に存在する「破壊」と「創造」という主題を精緻に分析し、この時代の文学における「破壊」というテーマの重要性を明らかにすることを目的として行われた。本年度の研究は大きく3つの方向性から進められた。 第一に、破壊をめぐる思索が個々の作家の歴史思想の形成過程にどのように関与しているかを考察するために、ヴィクトル・ユゴーの作品の分析を行い、その成果を口頭発表・論文"Ruine et la question du temps dans 1" ceuvre de Victor Hugo(ヴィクトル・ユゴーの作品における破壊と時間の問題)"として発表した(以下、それぞれめ論文の掲載先については下記の研究成果を参照)。これにより作家ヴィクトル・ユゴーに特有の破壊と時間の観念を明らかにした。 第二に、19世紀前半のフランス文学における終末論の流行の状況と、その後半世紀における文学的創造への影響を分析し、口頭発表・論文"Visionary Catastrophe(幻想のカタストロフィ)"として発表した.本論文では終末論の流行か、革命といり歴史的破壊の経験と密接に結びついていることを確認したうえで、破壊をめぐる思索が、19世紀後半における文学手法としてのパロデイの流行を引き起こすにいたるという文学史的な流れを明らかにした。 第三に、歴史的破壊の経験としての革命と暴動がどのように表象されているのかを考察し、それらが作家による「音識」と「無章識」の領域に対する思索へと接続されていることを明らかにした。その成果は、口頭発表・論文「ヴィクトル・ユゴーの作品における意識と無意識」として発表された。本論文では、この作家において、現実と夢想、「意識」と「無意識」の境界が、突如起こる暴力的な破壊により常に侵犯されるものとして思索されていることを明らかにした。
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