2010 Fiscal Year Annual Research Report
後期ソ連~現代ロシアの文化記号論における表象の「リアリティ」論とその社会的背景
Project/Area Number |
22820014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
乗松 亨平 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教 (40588711)
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Keywords | ロシア文学 / 文学理論 / 記号論 / ナショナリズム |
Research Abstract |
本研究は、後期ソ連~現代ロシアの人文科学研究・教育で大きな影響力をもちつづけている文化記号論について、この学派の領袖ユーリー・ロトマン(1922-93)の著作を中心に、ソ連・ロシアにおける文化的表象の「リアリティ」のありかたとの関わりを明らかにすることを目的とする。平成22年度は、以下のような活動を行った。 (1)資料調査・収集国内での調査のほか、2011年3月にモスクワのロシア国立図書館に調査出張を行った。『記号体系論集』『ロシア・スラヴ文献学論集』などのソ連記号論の文献のほか、M・ママルダシヴィリ、A・ピャチゴルスキーら、記号論に批判的だった学者の文献も収集した。平成23年度に読解を進め、後期ソ連~現代ロシアの人文学界全体のなかでの記号論の位置づけを明確にしたい。 (2)文献読解・研究ロシア文化の特殊性をめぐるロトマンの議論を、記号体系の複数性という彼の基本理念と関連づけて分析し、成果をまとめた(下記を参照)。さらに、ロマン主義時代のロシア貴族の「演劇的文化」に関するロトマンの論考を、同時代のソ連社会に対する隠喩的応答として検討中である。これについては平成23年度に成果をまとめる。これらの研究によって、ロトマンの記号論と「ロシア・ソヴィエト」という文脈の関係を、彼のテクストに対して内在的・外在的に明らかにできると考えている。 (3)成果発表「ユーリー・ロトマンの記号論における「ロシア・ソヴィエト」」のタイトルで、日本ロシア文学会全国大会で口頭発表を行った(平成22年11月6日、熊本学園大学)。それをもとに論文化し、学術誌に投稿した。
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