2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22820016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鵜飼 敦子 東京大学, 東洋文化研究所, 特任研究員 (30584924)
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Keywords | 芸術 / 異文化交渉史 / 近代 / ユーラシア / ジャポニズム / 高島北海 / フランス / 世紀末芸術 |
Research Abstract |
19世紀末の美術史の動きのなかで「日本的なるもの」が日本でどのようにつくりあげられ、諸外国に受容されたのかを解明するということが本研究の目的である。昨年度の調査では、とりわけ明治期の日本画家、高島北海の足跡・活動について新しい事実が分かった。 4月にアメリカ、ワシントンのフーリア美術館内において、「北海山水百種」70幅の高島の作品を確認した。またワシントンの議会図書館において、セントルイス万国博覧会前後の新聞や芸術雑誌の論評を調査し、高島北海に関する文字媒体資料の収集をおこなうことができた。このことから、フランス以外の土地でも、高島が作品制作の実演を行っていたことが明らかとなった。この調査結果は、「セントルイス万国博覧会(1904)の日本人」と題して国際日本文化研究センターが主催する国際シンポジウム「万国博覧会とアジア」で発表をおこなった。さらに美術館が発行している機関誌『潮流』に「高島北海とアメリカ」として調査報告が掲載された。この他の調査としては、1月に下関市立美術館において高島が欧州で集めた名刺236枚の調査をおこなった。その結果、国立森林学校の関係者や学校の留学生のみならず、様々な国籍の園芸関係者、芸術評論家や美術雑誌の編集者、美術館関係者、博覧会の審査員と高島が交友の輪を持っていたことが明らかとなった。この調査結果は下関市立美術館研究紀要に論文と翻刻が掲載された。なお、10月にはフランスのナンシー国立美術学校から招待を受け、Takashima et les artistes de l' Ecole de Nancyというテーマで講義を行った。高島北海の日本画家としての海外における活動は、「日本的なるもの」がどのように受容されたかを知るひとつの指標となろう。本科研で明らかとなった史資料は、国同士で取り交わされた公式な文書などの記録からは分らない、一般レベルの文化交流が存在していたことの証拠となるものであり、本研究の大きな成果であるといえる。
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Research Products
(8 results)