2011 Fiscal Year Annual Research Report
近世フランスにおけるジャンセニスムの意義と射程に関する思想史的研究
Project/Area Number |
22820028
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
御園 敬介 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (60586171)
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Keywords | ジャンセニスム / フランス / 17世紀 |
Research Abstract |
平成23年度の研究は、二つのテーマを軸に行われた。第一は、ジャンセニスム論争の主要な争点であった「信」の観念をめぐる様々な思索を題材とした思想史的研究、第二は、ジャンセニスムと当時の秘密結社組織「聖体会」との関係をめぐる歴史的研究である。第一のテーマについては、16世紀末から17世紀にかけて現れた「信仰分析」の試みを背景としてジャンセニスム論争を思想史的に位置づけようとした平成22年度の研究の延長として、17世紀後半にジャンセニスム論争に引き続いて激化したジャンセニストとプロテスタントの論争を取り上げ、そこに見られる最大の争点の一つがやはり信仰分析であったことを論証する作業が行われた。それにより、信の観念をめぐる哲学的思索が17世紀を通じて継続されていたこと、その中でジャンセニスム論争は良心の自由の考え方が確立される契機となったことが示され、しばしば曖昧なままにされてきたジャンセニスムの歴史的意味を評価するための新たな視点が提示された。第二のテーマについては、まず、聖体会がどのような組織で、その生成と消滅の歴史的経緯が如何なるものであったのかを把握すべく、先行研究の収集および読解に多くの時間が費やされた。続いて、聖体会にかんする一次史料、とりわけ年代記の読解が行われた。その組織網の広がりゆえに歴史家の注目を浴びてきた聖体会は、従来、ジャンセニスムの歴史において背景記述に留まってきたが、これらの作業をとおして、この結社の動向が反ジャンセニスム政策の実現に、予想以上に大きな役割を果たしていたことが理解された。この点は、ジャンセニスムの歴史記述においてしばしば見過ごされてきた要素である。
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