2010 Fiscal Year Annual Research Report
谷崎潤一郎と近代小説の条件―歴史・演劇・翻訳の形態変換に関する総合的研究
Project/Area Number |
22820031
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
中村 ともえ 静岡大学, 教育学部, 講師 (70580637)
|
Keywords | 谷崎潤一郎 / 源氏物語 / 現代語訳 |
Research Abstract |
本研究は、谷崎潤一郎という文学者の活動を起点に、【1】歴史・【2】演劇・【3】翻訳の3つのテーマのもと、近代の言語芸術における形態変換の諸様相を解明することを目的とする。当該年度は、まず、三嶋潤子氏(京都学園大学非常勤講師)との共同研究によって、谷崎の『源氏物語』の現代語訳(谷崎源氏)の改訳・改訂に関する調査を行い、共同執筆による論文、1「<谷崎源氏>考(一)-『潤一郎新訳源氏物語』愛蔵本における改訂に関する調査報告-」(下記11.参照)を発表した。<谷崎源氏>には「旧訳」・「新訳」・「新々訳」と呼ばれる三種類の訳がある。1では、従来の研究で看過されてきた「新訳」における本文改訂の実態を調査し、改訂が「旧訳」から「新訳」へ、「新訳」から「新々訳」へという<谷崎源氏>の二度の大きな改訳と同様の方向性を持つことを明らかにした。これは「研究実施計画」の【3】<翻訳を媒介とした文章の創出に関する研究>の成果であり、創作に準じる二次的な現象として注目されて来なかった現代語訳の訳文を、改訳・改訂という形態変換の過程に着目することで分析するという新たな方法論を提示した点で重要である。また、2『円地文子事典』(芸術至上主義文芸学会編、鼎書房、2011年4月17日刊行予定)では、「谷崎潤一郎」他の項目を担当し、下記二点に関して『円地文子全集』未収録の新資料を発掘し、円地と谷崎の文学的交流を明らかにした。(1)後年『源氏物語』の現代語訳を行う円地が、初期評論で<谷崎源氏>の訳文を批判していたこと(【3】の成果)。(2)円地が谷崎の歴史小説の劇化を企画し、脚本を担当したこと(【1】、【2】の成果)。その他、谷崎の戯曲『お国と五平』の上演に関する資料調査を行い、戯曲と上演台本の差異について、個人的に組織した研究会で発表を行った(【2】の成果)。
|
Research Products
(1 results)