2010 Fiscal Year Annual Research Report
近世成立の南朝関係の史書に関する文献学的・史料論的研究
Project/Area Number |
22820037
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
勢田 道生 大阪大学, 文学研究科, 助教 (40580668)
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Keywords | 日本文学 / 文献学 / 思想史 / 史学史 / 近世 / 南朝 |
Research Abstract |
本研究は、近世に成立した南朝関係の史書について、その成立と流通、またこれをめぐる知識人の交流の一端を解明することを目的とする。その前提として、本年度は、近世後期に成立又は流通した『南朝公卿補任』・『南朝編年記略』・『南朝皇胤紹運録』の伝本および流通状況の基礎的調査を計画し、下記の通りに遂行した。 第一に、上記三書について、諸所に蔵される写本を閲覧した上で、複写物又はデジタル画像を入手し、伝本調査を行った。その結果、これらの文献は、複数系統の伝本が存在し、それぞれ内容的に重要な相違があることが確認でき、さらに、その原態について、おおよその見通しを立てることができた。ただし、原態を残すと考えられる伝本は未だ確認できていないため、さらに調査を継続する必要がある。 第二に、上記文献の成立圏および流通圏と、これに関する知識人の交流について、津久井尚重、藤原貞幹、塙保己一、立原翠軒、柴野栗山、高山彦九郎らの著述・書翰等を調査し、その内容について検討を行った。その結果、これらの文献の成立圏、およびその原拠資料の流通圏として、近世中期の京都文壇が想定されるとの見通しを立てることができた。これについては、大阪大学古代中世文学研究会(平成23年3月26日)にて、「津久井尚重の研学と交流-近世後期における南朝史享受の一様相-」と題し、現時点での調査結果を報告した。 第三に、上記文献と共通する特徴を持つ『北畠准后伝』、神戸能房編『伊勢記』等について、その内容を調査することにより、上記諸書に共通する知的資源の流通の様相について、実態の解明を試みた。
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