2011 Fiscal Year Annual Research Report
中世後期公家社会の構造的特質と室町殿の「公家化」に関する基礎的研究
Project/Area Number |
22820038
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松永 和浩 大阪大学, 総合学術博物館, 助教 (90586760)
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Keywords | 室町幕府 / 室町殿 / 中世後期 / 公武関係 / 荘園 / 源氏長者 |
Research Abstract |
本研究は、鎌倉幕府・江戸幕府という前後の武家政権にはみられない室町幕府の首班(室町殿)の「公家化」という現象に着目し、室町殿権力の特徴、中世後期における公家社会の存在意義や公武関係の特質の一端を探ろうとするものである。ここでは将軍の「公家化」が公家社会に及ぼす影響を解明することに主眼を置いて研究を進めた。 本研究全体の研究計画(1)~(5)のうち、今年度は(3)~(5)に取り組んだ((1)・(2)は前年度)。 (1)南北朝・室町期の久我家の身分的地位(源氏長者)および家領に関する資料を収集する。 (2)(1)をもとに、室町期における久我家の身分的地位確立過程、家領経営の実態とその展開を明らかにし、それをもたらす背景、室町殿との関係性を考察する。 (3)南北朝・室町期の万里小路家の身分的地位および家領に関する資料を収集する。 (4)(3)をもとに、南北朝・室町期の万里小路家の身分的地位および家領の確立過程・実態とその展開を明らかにし、それをもたらす背景、室町殿との関係性を考察する。 (5)(2)(4)の成果を総合化し、室町殿を構成要素として含み込んだ室町期公家社会の構造的特質と展開を解明する。 (3)収集した未刊行史料および刊行史料を整理・読解・分析した結果、(4)万里小路家の身分上昇・家領確立は、一般に考えられてきた武家との私的主従関係、足利義満の「公家化」との関連のみに求めることはできず、南北朝内乱期における朝廷への奉公が公武両政権に評価されたためであることが判明した。 (5)については、(2)の成果と併せて、平成24年度に著書として公表する準備を進めた(学術振興会「研究成果公開促進費・学術図書」応募中)。 なお研究発表では、鎌倉~室町期を通じた公家政権の展開を考察した市沢哲『日本中世公家政治史の研究」「2011」を書評し、より広い視野で問題を捉える機会を得た。
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