2010 Fiscal Year Annual Research Report
バイオエコノミーの社会的インパクトに関する人類学的研究
Project/Area Number |
22820039
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山崎 吾郎 大阪大学, コミュニケーションデザイン・センター, 招へい研究員 (20583991)
|
Keywords | バイオエコノミー / 贈与 / 人格 / 動物 / 生政治 / 科学技術 |
Research Abstract |
平成22年度は、以下の三点について研究を進めた。(1)先行研究の検討。臓器移植医療のほか、動物実験、血液事業、生殖細胞の取引、遺伝子情報の使用に関する文書(民族誌、論文、著書、報告書、議事録等)を収集し、扱う人体資源の種類の違いによる歴史的変遷や制度の差異を比較した。そのことで、バイオエコノミーの広がりとその射程について検討した。とくに理論的枠組みに関わる先行研究については、研究動向論文を執筆して、そのなかで触れた(『生権力論の現在』勁草書房、所収)。(2)臓器不足をめぐる言説とその対応に関する検討。「臓器の移植に関する法律」の改定に伴う議論の変化や実践の変化について、これまで行ってきた調査を継続的に行った。また、英米仏において「臓器不足」の問題が重要な争点となっていることを踏まえ、臓器提供の必要性を正当化する論拠と、それによって引き起こされるコンフリクトの比較を行った。バイオエコノミーの観点から臓器移植をとらえた場合の問題点と有効な概念、今後の研究課題について論文にまとめた(『生権力論の現在』勁草書房、所収)。(3)民族誌的調査の準備と実施。カナダ・アルバータ大学を中心に、動物の社会的な利用に関する調査を行った。2月にエドモントン等に滞在し、今後の調査の打ち合わせを行ったほか、関連する文献の収集と読み込みを集中的に行った。人体の社会的利用との比較から動物の問題を扱うことで、バイオエコノミーにおける「生命」の位置づけを、人間と動物の関係性の変化と合わせて議論するための準備を行った。
|