2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22820043
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
沼尻 利通 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (90587635)
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Keywords | 平安時代 / 江戸時代 / 源氏物語 / 枕草子 / 湖月抄 / 版本 / 本文異同 / 章段区分 |
Research Abstract |
本研究は『源氏物語』『枕草子』などの平安文学が、江戸時代にどのように享受されているかを明らかにするものである。具体的な目的は以下の三点である。 (1)江戸時代に公刊された『絵入源氏物語』の三種類(大本・横長本・小本)の本文はどのような性格のものか。また相互の本文の影響関係はいかなるものかを究明する。 「桐壺」巻を翻刻し、比較したところ、大本(慶安本)、横長本(万治本)、小本(無刊記小本)のそれぞれの本文の性格が明らかになった。万治本は慶安本をそのまま写すのだが、そのさいに漢字に改める傾向が強い。無刊記小本は慶安本を写すさいには、漢宇をふりがなに改める傾向が強い。特に無刊記小本は、部分的に他本によって校訂していることが明らかになった。ただし、他の巻でも同じ事が言えるのかは、不明である。 (2)『源氏物語』の注釈書『湖月抄』の初摺(八尾版)と後摺(吉田版)の関係を明らかにする。 『湖月抄』の初摺(八尾版)之後摺(吉田版)は既に野村貴次により明らかにされているが、さらに研究をすすめ、初摺(八尾版)たはいくつかのバリエーションがあることが判明した。このことにより、『湖月抄』が数度の訂正を経て、吉田版に至ることが明らかとなった。今後は、八尾版の諸本調査をすすめていきたい。 (3)『枕草子』の章段区分の変遷を究明するための、基礎的な研究をおこなう。 江戸時代における『枕草子』章段区分方法を究明するために、江戸時代にほぼ同時期に刊行された加藤磐斎『清少納言枕草子抄』と北村季吟『枕草子春曙抄』の相互の関係についての基礎的な研究をおこなった。これまで、鈴木知太郎により『枕草子抄』と『春曙抄』には共同原拠本があるとされていたが、「本」というよりも「資料」とすべきではないかとの結論を得た。今後は、『春曙抄』の章段区分意識の究明や、三巻本の写本の本文区分についても考察をすすめたい。
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